第10話
「竜樹!」
竜樹が後ろを振り向くと、そこに泥だらけになった沙羅が立っていた。
「お前、なんでここに」
「嫌な予感がして……竜樹に何か危険が迫っているんじゃないかって」
「ここはお前が来るところじゃない」
「私は竜樹のことが心配で……でもあれは一体何なの?」
沙羅が吸い寄せられるようにふらふらと黒龍のほうに足を向けると、黒い尾が沙羅の死角から伸びてきた。
「危ない!」
竜樹が沙羅を抱き抱えると、黒い尾は二人ごと跳ね飛ばし宙に舞い上げた。竜樹は沙羅を庇うように下を向くと、そのまま頑丈な大岩に叩きつけられた。
「がはあ」竜樹は
「竜樹、大丈夫?」
「つっ、この程度はいつものことだが、今の俺達だけではあいつは倒せない。逃げろ」
沙羅ははっと母親の言葉を思い出し、髪に挿したかんざしに触れるとぽうっと黄金色の光を灯した。その光は次第に広がり、沙羅の全身を覆った。
「ううん、竜樹は……私が守る。お母さんが言ってた。これはすべての邪気を祓う神器なんだって」
「沙羅、そのかんざしは金鱗。なぜお前が……」
竜樹達が隙を見せた間合い、再び黒い尾が二人の頭上に振り落とされた。しかしその光に触れた瞬間、熱された鉄のようにどろどろと溶け落ちた。
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