第8話

「次鋒火鱗隊、前へ。地上に現れた餓妖どもを龍火りゅうかの炎で焼き祓え」

 神司達は赤い鱗を劫火ごうかの松明に変化させると、這い上がってきた餓妖に炎を向けた。

「華撃隊、錦冠にしきかむろを放て」

 打上筒から花火玉が打ち上げられる。

「龍火放射」

 松明から発した炎が一斉に伸びると餓妖に絡みつき、爆発すると残骸を飛び散らした。

 その残骸を燃やし尽くすかのように、空には花火の花弁が柳のように垂れ下がり、消えることなく燃え続けた。


 しかしその後方から多眼のむしが湧き出し、海沿いの岩場を埋め尽くす。俊敏な動きで徘徊する餓妖に松明の炎は追いつくことができなかった。


「中堅水鱗隊、究極神技じんぎみそぎの龍水で蟲どもを洗い流せ」

 青い鱗が神鏡しんきょうに変化し、鏡から大量の水流が放出されると、蟲達は渦巻きに巻き込まれ、海に押し流された。

「華撃隊、仕掛け花火で海上の蟲どもを燃え盛かせろ」

 海上に設置された三キロメートルに及ぶ長さの仕掛け花火に火が灯された。

 海上に並ぶ花火が次々と浄化の火花を散らすと、海上を彷徨う蟲に引火し、炎の飛沫しぶきを上げた。


 海面に連なり鏡のように映り込むナイアガラの滝に、聖観橋で眺める観覧者からは大きな歓声と拍手が沸き上がっていた。

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