第15話祖父とわたしたち家族の人生

 祖父にとっての人生とわたしたち家族の人生は少し違うかもしれない。

 育った年代も違うし、育った環境条件も異なる。

 しかし、同じ屋根の下で生活したものどうしなので、人生を共有することは大切ではないかとわたしは思う。

 人生を共有するって難しい話かもしれない。

 でもその人のことを理解したら、その人の育った時代や歴史も知ることができる。

 

 祖父が育った年代は戦争があり、軍隊に行っていたらしい。

 実際どんな戦争だったのかはわからないが、しっかりと戦争で生き抜いて、家族のために尽くしてくれた祖父は偉大な存在である。

 わたしは戦争の大変さを知らない世代で生まれたので、はっきりと戦争の悲惨さがわからない。

 生き証人であるお年寄りに戦争の話を聞いたら、その当時のことを少しでも実感できる。

 祖母も祖父と同じく恐らく戦争体験者だからわかるかもしれない。

 

 昔の記憶は決して色褪せることなく、残っていく。

 死んだ祖父の記憶もいまだに鮮明に残っている。

 笑った顔をして亡くなった祖父の葬式と通夜にわたしは参列した。

 実際に行ってみると、親族が何人か葬儀場にいて、一緒に弔った。

 火葬現場にも行ったし、そこで死体が燃えて、灰になる様子も目の当たりにした。

 遺灰になったものを骨壺に入れて、墓場に埋める。

 

 耐え難いものがあるが、人は決してずっと生きることができない。

 いつかはだれか家族が亡くなっていく。

 そして埋葬して、供養しないといけない。

 お経を唱えて、死者を慈しむ。

 慈悲の精神がわたしたちには必要である。


 癒えない傷は残るが、前を向いて歩きださないといけない。

 それが祖父とわたしたち家族の人生である。


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