第11話 赤銅色の未来

「ありがとう……」

「僕こそ、うれしいよ」


「大好き、一緒にいたい」

「初めて会った時から、君を愛……してたんだ」

 もう一度、強く抱きしめ合った。お互いから香る匂いを吸い込み、その存在を確かめ合っていた。


「……怪我、大丈夫?」

「大した事ないよ、君こそ体は平気なのか?」

「私の波動は……どうやらここが合っているみたい。赤の波動」

 

 ――ウォウ、ウォウ――

 ハルが尻尾をグルグル回して、完全同調のサインを送っていた。


 二人は視線を夕陽のほうに移すと、すでに青と黒の世界は遠くに離れていて、辺り一面、赤のグラデーションの情景となっていた。


 二人が取り残された世界……赤銅色の次元境界

 

「二人だけになっちゃったね」

「秋菜と一緒なら、どこでもいい。ここで二人でうまくやっていこう」


 秋菜は微笑んだ。未来への不安はどこにもなかった、ただ春樹の気さくな笑顔を見れて、安堵の気持ちしかなかった。


「さてと……まずはコンビニでも行って、食料でも探すか?」

「そうね、たぶん誰もいないと思うけど。あとその頭、とりあえず消毒して包帯でも巻こうか?」

「住むところも考えないとな」

「どこも空き家だと思うから……気に入ったところに住もうよ!」


 いつの間にか、秋菜は自然に話せるようになっていた。

 二人は手をつないで、橋の上を歩き出した。


 永遠に沈まない夕陽が河川を照らし、絵画のような黄昏時たそがれどき景趣けいしゅを水面に描いていた。

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