第8話 別れる世界

 翌日、再び青の世界と黒の世界が分かれる時がやって来た。

 人々は別れを惜しみ、互いの温もりを忘れないよう、強く抱擁を重ねた。五年という長い歳月が彼らの繋がりをさらに強いものにしていた。


「それじゃ、お父さん、元気でね」

「ああ、母さん、秋菜、元気でな」


「あ、忘れ物」

 そう言うと、母親は父親の頬にチュッと軽くキスをした。


 またもや顔を赤くした父親は、大きく手を振りながら家を後にした。

 二つの世界が分離する際、次元が不安定になるため、それぞれの安全地帯まで退避する必要があった。そのため、父親は家を離れなければならなかった。


「もうすぐ青の世界とお別れね……秋菜、春樹くんに挨拶は行かないの? もう時間ないわよ?」

「うん、でも私こんな体だし、彼と話したからって、どうにもならないし」

「もう会えなくなるのよ?」


「……私は」

 ――春樹と一緒にいたい――


 ――まもなく次元分離が開始されます。住民の皆様はそれぞれの安全区域まで退避をお願いいたします――


 街に設置された屋外拡声スピーカーから、緊急放送の音がこだましていた。

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