第五、
三々五々、同級生が談笑している。教室内の空気は、稍重たく、調えた顔立ちの友だちが、
「俺は肉体の奴隷や囚人なんかじゃない」と、樹の上に登った少年は、心の裡に呟いた。と、宿題の空欄に、答えを書いた。次の質問は、心理学者の胸ポケットに、妖精が棲む、其処へ、女が携帯端末から連絡した。携帯端末のアドレス、そこから女の人脈を探るような視線を送る弟の家の宗派は、何だったか。
竜子は、捨て鉢めいて鉛筆で答えを書いた。女は、心理学の入門書を、弟に買った。その夜るホテル内の喫煙室で、弟は、霊的存在と会った。
「名前なんて言うの?」
「千羽鶴と申します」
「亡くした人と夢で会ったとき、寂しかったと俺に言ってたね」
「僕と会ったことは秘密にしてくださいよ」
「運命の交差路、おまえなら、どうする」
「そうですね、擦れ違う人間の顔でも、覚えておきますよ」
「千羽鶴、前世でも縁が在る人は、振り返ってから五秒以内に三回目が合うらしいよ」
「え、そうなんですか?」
「いや、俺の話しなんて出鱈目だからね」
竜子は、紙の余白に、弟は細身で二重瞼、と書いた。国語の成績は、良さそうだった。
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