とある職場の昼休み 3)玉露の淹れ方 時短術

「玉露の淹れ方、時短で出来る方法、教えてもらったんです」

後輩の言葉に、首を傾げた。

「時短?」

適温のお湯を用意するだけで手間がかかるのが玉露だ。


「牛乳出しコーヒーを教えてくれた御礼です。母も友達に教えてもらったとかで」

昨年の夏、私は水出しコーヒーを知った。今年の夏、私は牛乳出しコーヒーも知った。当然のように巻き込んだ一人が、今眼の前に居る後輩だ。


「玉露って60度くらいが適温じゃないですか」

「低温でゆっくり抽出するというけれど、その前のお湯を準備する段階で時間がかかるから、なかなか。お値段もなかなか」

「そうそう。二煎目、三煎目というけれど、そこにたどり着くまでが、なかなかですよね。それを簡単にする方法、あるんです」


 後輩が、身を乗り出してきた。

「急須に茶葉をいれたあと、先に水を入れるんです」

「水? 」

「そう。水です。お水。その後、お湯を入れます」

「あ、なるほど。水は比熱が1だから」

「そうです、そうです。分量でだいたい温度調節が出来ます」

「なるほど。天才! ありがとう」

「母が母の友達に教わったんです」

「お母様とお母様のご友人にも、ありがとうとぜひ」

「はい。伝えときます」


「あとはあれね。必要なものは唯一つ!」

私の言葉に後輩は首を傾げた。

「玉露」

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