3. 不思議な女の子と不吉な電話


「で、この子は誰なの?」

 居間のコタツで爆音で連続ドラマを見ていたばあちゃんは、ドラマを最後まで見終わってから茶を一口啜り、おもむろにそう言った。

 松田龍作がばあちゃんの推しらしく、松田龍作が出演しているドラマを見るのが目下もっかのばあちゃんの人生における最重要ミッションなので、ドラマの放送中はなにを言ってもなにをしても、ばあちゃんは反応しないのだ。

 でも、ただ反応しないだけで、周囲でなにが起こっているのかはちゃんと把握しているらしい。松田龍作に夢中で周囲のことが気にならないわけではなく、松田龍作に夢中になるために意図的に周囲のこと一切を無視しているわけで、逆に凄みがある。なにかに夢中になるっていうのも、自分自身のつよい意志の力があってのことなのだろう。

「分からん」「分かんない」と、俺とヒナは声をそろえて返事した。

 母ちゃんは下半身をコタツに突っ込んでガーガーといびきをかいていて、その横には妖精さんのようにお耽美たんびな顔をした金髪の美少女が転がっていて、なんというか、画面のコントラストがすごい。写真に撮って批評性のあるタイトルをつけたら、なにかの賞を狙えそうだ。

「ともくんの事務所に裏の窓から忍び込んだら、この人が先に居たみたいで、いきなり襲われたんだよ。真っ暗だったからよく見えないし、武器も持ってるみたいだったから手加減できなくて、おもっきりネリチャギしちゃった」

 で、ヒナのかかと落としを脳天にガツンと食らった妖精さんは気絶しちゃって、そのままにしておくわけにもいかず、さりとて、やむを得ないとはいえ全力で踵落とししてしまった都合上、いまいちこちらから警察や救急車を呼ぶのにも抵抗があり、仕方がないから自転車の荷台に座らせて、事務所にあった結束バンドやビニール紐であちこちを固定して、どうにかここまで連れてきたのだった。たまたま誰にも見とがめられなかったからよかったものの、警察に職務質問でもされてたら非常にややこしかっただろう。ちなみに、あぶれたヒナは平気な顔で自転車の横を並走して帰ってきた。最初から二人乗りの必要はなかったのでは?

「たぶん脳震盪のうしんとうを起こしてるだけだと思うんだけど、うーん、死んだりしないよね?」

「いや、分からんけど。ヒナがやってるのってガチの殺人テコンドーでしょ」

 とはいえ、たぶんこの妖精さんが親父の事務所にいたのは不法侵入だし、まあ俺たちも窓から侵入したので不法侵入っぽさはあるけど、言ってもこっちは親族だし、となると、蹴ったり殴ったりくらいは正当防衛てきなアレでなんとかなる気がしないでもない。

「やばいかなぁ? たのむ~死ぬな~生き返ってくれ~」と、ヒナが両をあわせ神棚に向かって拝む。こういうとき、すぐそこに拝む先があるのは便利といえば便利だ。

 ヒナの母親である彩矢おばさんのスナックのチーママのアンナさんは韓国籍で、旦那が元テコンドーの選手なのだが、ヒナは小さい頃にその人にテコンドーの手ほどきを受けたあと、その人の紹介で小学二年のときから正式にテコンドーの道場に通っていて今ではそこのエースなのだ。

 競技としてのテコンドーには大まかにふたつの流派があるのだが、ヒナがやっているのは限定フルコンタクトのほうだし、おまけにヒナが所属している道場は原理主義的というか過激思想の持ち主で、実はテコンドーではなくそうけんりゅうからを自称している。ベトナムでは素手でベトコン千人を打ち倒したという、バリバリの実戦カラテだ。

「すごくいい動きしてたから絶対ヤバいと思って、ぼくも手加減する余裕がまったくなかったんだけど、まさかこんなちっさい女の子だったとは。フライ級に届いてないんじゃないかな」

「そうか? 体格的にはヒナも大差ないように見えるけど」

「ぼくはわりと骨格がしっかりしてるからね。一階級下の女の子に全力でネリチャギかましたとか道場で知られたら、めっちゃ馬鹿にされそう。まーくん内緒にしててね」

「内緒もなにも、俺はヒナの道場の人らと1ミリも接点ないよ」

「むかーし一回だけ体験で来たことなかったっけ? 一回でボロ泣きして帰ったけど」

「あ~……そういうのも、あったような気もするなぁ」

「まーくんも毎日ブラブラしてるだけなら、今からでも通えばいいのに」

 俺とヒナがそんなことを言い合っていると、ばあちゃんがまた一口茶を啜って「似てるね」と、呟く。

「え?」

 俺が訊きかえすと、ばあちゃんは俺の顔をまじまじと見ながら「ほら。まーくんによく似てるでしょ?」と、あごで気絶している金髪美少女をしめす。

「あ、うん。そうだね。言われてみれば、この子の森の妖精さんてきなはかなげな雰囲気を丸ごと取り除いたら、ちょっとまーくんに似てるかも」

 ヒナもそう言って頷くのだが、この女の子の場合、森の妖精さんてきな儚げな雰囲気が本体みたいなものだから、そこを引いたらだいたいの人が似てることになってしまわないだろうか。そもそも俺は、わりと特徴のない平均的なモブ顔だし。仮に、似ているように見えるのなら、それはばあちゃんの人間の顔に対する認識能力の問題だと思う。大丈夫か? 認知症の初期症状とかじゃないだろうな?

「まあでも、似てるって言っても、どっからどう見ても日本人ではないしね」と、ヒナが顎に指を当て、首をひねる。「あ、ていうかアレじゃないの? ほら、ともくんがアメリカの女の人とこさえたっていう娘さん」

「いや、あの子は……え~、メリッサは、もっとエスニックな顔つきで、金髪じゃねぇよ」

「あ、そうか。まーくんアメリカの子には会ったことがあるんだっけ?」

「うん。少なくとも、この子じゃないのは間違いない」

「え~? でもじゃあ、他に外国人の女の子がともくんの事務所から出てくるって、どんな事情かなぁ? 普通、そんなことある?」

 そこで妖精さんが「うっ……」とうめき声をあげ、ゆっくりと目を開いた。あたりを見回して、認識し、今度は慌てて跳び起きようとするが、腕も足も結束バンドで縛られているので、畳のうえでビクンッ! と、エビみたいに跳ねただけだった。

「あ、ごめんね。いきなり襲われたし危ないかもしれないから、いちおう武器は回収させてもらって、そのうえで拘束させてもらってるけど」

 そう言って、ヒナは妖精さんから奪ったゴツいコンバットナイフをプラプラと振る。妖精さんはヒナ、俺、ばあちゃんと順番に視線を送り、すこし身をよじって拘束の具合をたしかめ、諦めたようにまたドンと畳に頭をつける。

「あ~よかった、死んでなくて。えっと、大丈夫? 日本語、分かる?」

「ダ。わかります。おおむね」

 外国人てきなイントネーションはあるものの、妖精さんも日本語を喋ってくれたのでひとまず安心する。俺もヒナも、謎に数ヶ国語を喋る親父と違って、高校の英語しかやっていないし、その成績だって決して良くはない。まあ俺もつたないなりにアメリカの妹とは英語で会話したわけだし、ヴィジャイとなんか日本語でも英語でもないよく分からないソウル・ランゲージでやりとりしていたのだから、なんだって、やってやれないことはないんだろうけれども。

「頭いたい? 気分が悪いとか、どこかおかしいところとかない?」

「ダ。頭はいたい。でも、へいき。しーんーこーくー? しんこくでない」

「よかった。ごめんね、手加減できなくて」

「グジェ。ここは、どこ?」

 流れで、妖精さんとの会話の窓口はヒナになったようだ。俺も、この場にいるメンバーの中ではヒナが適任だと思う。ヒナは、まあ単純な戦闘能力で言えばかなり最強なのだが、なにしろ見た目はかわいいので威圧感はないはずだ。

「ここは僕の……えっと、僕の家ではないんだけど、そこの事情はわりと複雑だから割愛かつあいするね。ここは僕たちの家で、あなたがひそんでいたのは、この家のお父さんの事務所。あそこであなたが僕に急に襲い掛かってきたので、僕はむなくあなたを撃退しました。でも、僕は鼻血が出たくらいで大した怪我もしなかったし、それ以外にはあなたに特段のうらみはないので、危害を加えるつもりはありません。いろいろと、不思議に思っているだけ。だから、できれば暴れず、おとなしくしててくれると助かるな」

 ヒナは両手を広げて妖精さんのほうに向ける。敵意はありませんよを表現するポーズらしい。

「ラードナ。わたしも、あなたにうらみする。ないです」

 言って、妖精さんは軽く首を横に振る。サラサラの金髪がキラキラと揺れる。たぶん、個人的なうらみがあるわけじゃない、みたいな意味だろう。

「ありがとう。じゃあ拘束は解くよ。いいでしょ? まーくんも」

 ヒナが俺に訊いてくるが、俺には彼女の危険性が評価できないので、ヒナの判断を信じるしかない。黙って頷く。

 ヒナがニッパーでパチンパチンと結束バンドを切る。起き上がった妖精さんは手首をくるくる回して、怪我の具合とかを確認しているようだ。

「ついでに、いくつか質問させてもらってもいいかな。僕たちにはいきなり君に襲われるような理由に思い当たりがないし、ひょっとすると、たんに不幸な行き違いがあっただけなんじゃないかって気がしてるんだけど」

 ヒナが訊く。

「……ぜんぶ話すできるか分からない。でも、答えられるは答える」

 妖精さんが頷く。

「うん、それで大丈夫。じゃあ聞きたいんだけど、まず、あなたは誰? ともくんとは……あの事務所の持ち主とは、どういう関係の人?」

「わたしはユーリ。トモヒロ・ムラカミは、わたしたち? ビジネスの相手」

 妖精さん改め、ユーリが言う。詳しくは分からないが、親父の仕事の関係の誰かではあるようだ。

「ユーリ。いい名前だね。ぼくはヒナで、こっちはまーくん。サン・オブ・トモヒロ・ムラカミ。あと、そっちはまーくんのおばあちゃんで、そこに寝てるのはまーくんのお母さん。ヒズ・グランドマザーとヒズ・マザーね、オーケイ?」

 ヒナがざっくりと紹介する。ばあちゃんがポットから熱いお茶を注いで、ユーリに「はい、どうぞ」と出して、おかきとかせんべいとかが盛られた菓子盆をユーリのほうにちょっと寄せた。ユーリは「うぉ……スパシーバ」と言って、不思議なものでも見るみたいに湯飲みをじっと見つめる。

「ユーリは、あそこでなにをしていたの?」ヒナが訊く。

「あるもの、探すしてた。あるもの、あそこいった、分かってる。でも、もうない。取り戻す、しないといけない」ユーリはとりあえず湯飲みに手を添えて、でも飲まない。まだ警戒してるのか、もしくはたんに猫舌なのかもしれない。

「うーんと、ユーリのなにかが盗まれるかなにかして、それを探しているということ?」

 ひょっとして、うちの親父がこの子からなにかを盗んだという話だろうか? それを取り戻しにきたところをヒナにガツンとやられたとなると、正当防衛どころの話じゃない気がする。こういうの、なんていうんだっけ? 盗人に追い銭? ちがうか。

「ニェ。わたしのもの、ちがう。盗まれたも、わからない。それ、調べる」

 ユーリは日本語が不慣れっぽいのもさることながら、表情がとぼしいので怒っているのか悲しんでいるのか困っているのかなんなのか、そういうのがつかみづらくて、なおのこと、どういう立場なのかがよく分からない。

「あるものというのは、具体的にはなに?」

「ニェポニラー。説明むずかしい。ロシア語で話すしたい」

 そんな気はしてたけど、ユーリはどうやらロシア人のようだ。

「うーん、ロシア語で話されてもぼくが分かんないしね」ヒナが腕を組む。「それはなにか金目のもの?」

「ニェ。売り買いする、ない。お金、ならない。たぶん」

「それはなにか違法性があるもの?」

「ニェ。それは違法、ない? たぶん。でも、ちょっと、ダ? むずかしい」

「そのニェっていうのは、いいえという意味?」

「ダ。ニェはいいえ」

「そうなんだ。なんかかわいいね」

「ヤーニェポニラ」

「ヤーニェ……? まあいいや。えっと、それは危険なもの?」

「ダ。そう。おそらく、そう」

「なんかウミガメのスープみたいだな」俺が言うと、ヒナとユーリがふたりして俺のほうに顔を向けて『ニェ?』って感じの顔をしたので、俺は「いや、なんでもない。気にしないで」と手を振って、黙っていることにした。

 ヒナがおもむろに菓子盆に手を伸ばし、せんべいの袋を破ってかじりながら言った。

「ユーリは、それをともくんが……(バリバリ)トモヒロ・ムラカミが……(バリッバリッ)盗んで逃げたと考えている?」バリバリ、くしゃくしゃ。

「ヴァズモージュナ。盗んだ? わからない。あ~、オシッコ? かもしれない」

「オシッコ?」「おしっこ?」唐突な単語にびっくりして、俺とヒナは同時に首をかしげた。

「あ~、オシッコ~は、ミステイク。ただ、ミステイク、かも? 見つけて、話をきくする」

「なるほど……(バリッバリッ)ユーリもわからなくて、詳細を知るために……(ゴクン)とにかく、ともくんを探しているんだね。で、実はぼくたちもともくんを探しているんだ」

 ヒナがせんべいをひとつ手にとって、ユーリに「食べる?」と訊く。ユーリは不思議そうな顔で受け取ると、袋を破ってかじってみる。ちから加減が分からないらしく、なかなかみ砕けない。やっとパキンとせんべいが割れて、しばらく無言でバリバリと噛んで飲み込んだあとで「しょっぱい。甘いのと思いました」と言った。

「好きじゃなかった?」

「ニェ。思ったと違う。でも嫌い、ない。好き思うます」

「あそう。よかった」

 ユーリがやっとお茶に口をつける。やっぱりなにかがに落ちないみたいな顔をしていて、口に合ったのかどうなのかはよく分からない。

「だから、少なくとも今の段階では、ぼくたちの目的は同じで、敵対的な関係にないと思う」ヒナが言う。

「ダ。わかるます。敵、同時、たくさん、わたし好きない」ユーリが頷く。

「うんうん。そうだよね。誰彼かまわず無暗むやみに敵対するのはよくない。けられる争いは避けるべきだ。僕たちとユーリのあいだには、争う理由がない。目的は同じなんだから、ここはひとつ協力をしませんか」

 ヒナが言うと、ユーリは黙り込んだ。一分くらい考えて「提案は、ゴーリ、てき? 合理的、おもいます」と返事をした。「でも、わたし、その判断する、ない。わたし、命令で探すだけ」

「なるほど。ユーリは自分の意志で探してるんじゃなくて、誰かの命令で、つまり上司とかに言われて、仕事としてそれを探している?」

「ダ。わたし、仕事これ。協力、わたしはオーケイ。でも、ボスに訊くします」

 ユーリがそう返事したのを見計らったかのように、俺のスマホが鳴った。画面には知らない携帯の番号が表示されていた。俺はなんとなくヒナとユーリに目配せを送ったが、ヒナは無反応だし、ユーリは無表情のまませんべいをバリバリ食っていて、ばあちゃんはさっき見終えたばかりのドラマの録画を最初から見直していた。

 仕方がないので、俺は俺の判断で電話に出た。

「村上真尋くん」と、出し抜けに電話の相手は言った。大人の男だった。「はい」と、俺は返事をした。

「うちのユーリがご迷惑をお掛けしたようで申し訳ない」男がそう言ったので、ユーリの関係者らしいことは分かる。おそらく、この男が彼女の言う『ボス』なのだろう。

「彼女は無事?」男が訊いて、俺は「あ、ええ。はい」と、返事をした。「いませんべいを食べています」

「せんべい?」と、最初から余裕ムード全開だった男が、はじめて怪訝けげんそうな声を出したので、なんでか知らんが俺はちょっと満足した。この男のペースに呑まれるのは、たぶん、あんまりよくない。

「えっと、とにかく無事です。たぶん。頭を打ってるんで……」と言いかけ、ヒナが思いっきり踵落としをきめたのを『頭を打った』と表現していいものかすこし迷ったが、余計に話がややこしくなりそうだったので「頭を打ってるんで、あとでちゃんと検査をしたほうがいいとは思うッスけど」と、言い切った。

「なるほど。そうしよう」

「えっと、なんで俺の電話番号を?」

 俺が訊くと、男は「それは、私が君の電話番号をどのようにして知ったのかという、具体的な手順について?」と、質問してきた。

「あ、ええ。はい。そうです」

「すまないが、詳しくは私にも分からない」男が言った。「私は君に電話をかけたいと思い、部下にそう言った。すると部下が君に電話をかけてくれた。たいていのことはそういう感じなんだ。私がやりたいことは、部下がどうにかして叶えてくれる。どうやったのかを私は知らないし、興味もない。私はそういう立場にいる人間なのだと理解してほしい」

「なるほど」と俺は返事をした。なんか分からんが、なんらかの大物っぽい雰囲気はぷんぷんする。まあ、俺の電話番号くらいは知ろうと思えば調べられないこともないのだろう。とくに隠しているわけでもないし。「えっと、それで、俺たちはあまり状況とか事態とか、そういうのをまだ把握できていなくて、ユーリは日本語だとあまりうまく言えないみたいだし、できれば説明してくれると助かるんスけど。いろいろと」

「もちろんそのつもりだが、この電話ではすこし都合が悪い。車をよこしたので、こちらに来てもらえるかな」

「ちょっと待ってください」と、男に言って、俺はヒナに「なんか車をよこすからこっち来いって言ってんだけど、大丈夫かな」と訊いた。

「どうだろうね?」と、ヒナがまたひとつせんべいの袋を剥きながら言う。「でもそのかんじだと、相手はこっちの住所も分かってるんだろうから、大丈夫じゃなかった場合は、行こうが行くまいが同じなんじゃない?」

「なるほど、そういう考え方もあるか」

 大丈夫じゃなかったとしても、うちにはばあちゃんと母ちゃんがいるので、ここで大丈夫じゃない事態になるよりは、こちらから出向いて、むこうで大丈夫じゃないことになったほうがまだマシというのはある。なにかがあったとしても、俺とヒナだけの話で済む。

「ん。たぶん大丈夫」ユーリが言った。「もし危ないだったら、わたし守るします」

「君が? 俺たちを?」ユーリのボスから? なんか指揮系統とか関係性チャートとか、そういうのがこんがらがってないか?

「ダ。わたし、あなた、好き。守るしますから、危険ない」

「は?」

 俺が困惑する横で、ヒナが「わあ、またまーくんの早業はやわざじゃん。なに?」と、ぽろりとせんべいを取り落とした。

 いやいやいやいや、今回は俺はマジで別になんもしてなくない? ほとんど、ヒナが喋ってるのを横で聞いてただけだし。なにか言語的な問題で行き違いが発生しているだけのような気がするが、まあいいか。

「分かりました」と、俺が電話の向こうの男に返事をするのと同時に、ピンポーンとうちのインターホンが鳴った。

「それでは後ほど」そう言って、男は電話を切った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る