2022/12/14 第14話
正直初対面の人たちと、それも大人数で話すのは苦手だ。先生は「お前の方が年が近いんだからグイグイいけよ」などと適当なことを言うが、絶対にグイグイ行くのは先生の方になるだろう。適材適所という言葉もある。
ともかく、おれたちは映画部の部室に向かった。途中、周囲に黄色と黒のテープが張られたやや古めの建物の近くを通りすぎる。ここは旧部室棟とのことで、最近は一部の部が活動に使うほか、倉庫や臨時の会議室として使用されていたらしい。ところが新泥さん、来美さんと相次いでここの最上階から飛び降り自殺を遂げたため、現在では立ち入り禁止になっているとのことだった。
「元々手すりがちょっと低くてさ~、危ないって話だったからぁ、工事とかするんじゃないの~?」
春子さんはベランダの手すりを指さしてそう言った。
新部室棟はカフェテリアの近くにあった。コンクリート打ちっぱなしの外壁がいかにもスタイリッシュな建物で、さすが金持ちの通う大学は違うな……などと感心してしまう。春子さんはおれたちを案内しながら、どんどん中に入っていった。
「えっとね~、映画部は三階の南の方だったかな~? あ~、ここだ~」
と指さした先には、自主制作らしい映画のチラシが何枚も貼られた、いかにも映画を作っている部っぽいドアがあった。まったく芽が出なかった俳優志望時代を思い出してちょっと切なくなってしまう……。
「映画部おっつ~!」
おれの感傷など知る由もなく、春子さんが明るい声と共にドアを開けた。
春子さんはとりあえず、おれたちのことを来美さんのお姉さんの知り合いで、来美さんが亡くなったときのことを調べている人で……などと説明してくれたらしい。まぁ、いきなり霊能力者って名乗ったら怪しまれそうだよな……と心配していたのだが、杞憂に終わった。部員の中に先生のことを知っている子が何人かいたのである。そういうわけで、おれたちはおおむね歓迎の雰囲気をもって迎えられた。
「うそ……本物の禅士院雨息斎じゃん……」
と一番盛り上がっているのは意外なことに男子学生だった。どうやら彼、オカルトマニアらしい。先生、そういう層にも人気あったのか……一応実績らしきものあげてるもんな……。
「やばいイケメンきた! ファルコンの何!?」
「ん~? そういえば先生あたしの何~? えーと知り合い~!」
春子さんは映画部所属ではないとのことだが、本当に顔が広いようだ。と、ひとりの男子学生が立ち上がって、おれたちに椅子をすすめつつ挨拶をした。
「はじめまして。映画部部長の
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