2022/12/02 第2話
応接室に入ると馬刷間さんは急に緊張した面持ちになった。おれには女性のファッションというものはさっぱりわからないのだが、そのおれから見ても彼女は「今時のお洒落な女の子」という感じだった。艶々した栗色のロングヘアを靡かせ、顔立ちも派手でぱっと目立つ美人だ。
女子大生か、社会人になってすぐくらいだろうか? などと考えながら紅茶を出した。助手の仕事である。正直お茶を淹れるのだけは上手くなったと自負している。
「ええと、あたし
そう語り始めた彼女の口から出てきた大学名は、そこそこ有名な私立大学だった。確か、結構偏差値とか高かったんじゃないか? それに金持ちが多いイメージのところでもある。彼女、お嬢様なのかもしれないな……などとおれは勝手に想像した。
「先月、あたしの親友と映画のメイキングを撮ってたんです。その動画に変なものが映ってて……気味悪いなって思ってはいたんですけど、消すとかはまだ考えてなくて……そしたらその、一緒に撮ってた友達が……亡くなったんです」
馬刷間さんは、そう言うとハンカチを取り出して目元を抑えた。
「……自殺だったんです。みんな驚いてたけど、あたしは自分で撮った動画のせいだと思うんです。だって変な女が映ってて、
そう言うと、馬刷間さんは顔に手を当ててしくしく泣き始めてしまった。
「馬刷間さん、無理はなさらないでください。話すだけでも辛いでしょうからね」
先生はいかにも親切そうに口を挟んだ。馬刷間さんはハンカチで目元を抑えながらうんうんとうなずく。
「すみません、取り乱して……でもあたし怖いんです。あの子だけじゃなくて、あたしも呪われちゃったかも……だ、だって夢に見るんです。あの子があたしの夢に出てきて、指をさしてくるんです……! せ、先生、先生はすごい霊能者なんですよね? あたしのこと、助けてもらえますか!?」
「もちろんですよ、馬刷間さん」
半泣きの馬刷間さんに対して、先生は落ち着いた様子でそう答えた。「これでも霊能力者の端くれですからね。何かのお役には立てるかと」
よくもまぁこれほど自信満々に嘘をつけるものだ……毎度毎度感心してしまう。先生、おれよりも余程俳優の才能があると思う。
「とりあえず、その動画を見せていただけませんか? 柳くん、ちょっと」
先生がおれに向かって手招きをする。どうやら一緒に見ろと言いたいらしい――ってイヤだよ! 呪われたらどうすんだよ! 責任とってくれんの!?
――そんなおれの心中の叫びも知らず、馬刷間さんはスマートフォンを取り出した。
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