【アドベントカレンダー】禅士院雨息斎のホラームービー劇場
尾八原ジュージ
2022/12/01 第1話
都内某所にある二階建てのレトロな一軒家が、今巷で話題の霊能者・
おれはこの事務所で雨息斎先生の助手をやっている、
さて冬のある日、その事務所にやってきたのは若い女の子だった。アポイントメントの五分前にやってきたのはいいが、いきなり「先生っ!」と言いながら玄関を開けたおれに突撃してきたのには参った。
「ぶっ」
「先生! 先生はすごい霊能力者なんですよね!? あたし助かりますよねっ!」
肩を掴まれてがくがく揺さぶられながら、おれはやっとのことで「ち、ちがいます」と答えた。「じょ、助手です」
「あっ……すみません、失礼しました……」
なんかすごくションボリさせてしまった。とはいえおれのせいではないと思うのだが……むしろこの影が薄くていかにも頼りにならなさそうな男が、お目当ての霊能力者ではなかったことに感謝してほしいくらいだ。
「何をやってるんだ柳くん」
ステンドグラスの嵌った観音開きのドアを開けて、雨息斎先生が顔を出した。その途端に女の子が「おぉ」という声を発したのが、いやでもおれの耳に届いた。
すらりとした長身に彫りの深い整った顔立ち、年頃はまだ三十そこそこだが、黒い着物に同系色の羽織という渋い格好がよく似合っている。おそらく誰がどう見てもイケメンの類だろう。これが巷で人気を博している一因なのである。もちろん見た目だけではなく、ちゃんと依頼もこなしている。こなしている……のだが……。
「お約束していた
「は、はい。そうです」
「ちょうど手が空いていたところです。少し早いですがお入りください」
先生はニッコリ笑って馬刷間さんを応接室に案内した。
彼女はさっきの取り乱し様はどこへやら、ササッと髪の乱れを直し、軽い足取りで先生についていく。まぁそうなってしまうのも仕方がない。とにかく見た目がいいのだ。態度も堂々として、それでいてなんとなく品がある。声もいいし話も上手い。
が、ひとつ問題がある。大問題だ。正直、おれはいつもヒヤヒヤしている。
この男――禅士院雨息斎は、霊能力などかけらもない、インチキ霊能力者なのである!
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