第6話

 倉庫に入ると真っ暗な空間に錆びた大型ラックが並んでいたが、一番奥にランプの灯りがちらつく部屋があった。

「……罠ね。三手に分かれて徐々に包囲するわよ。ポポは私についてきて」

 リコが手で暗号サインを送ると、ユズとハナビは頷き、左右の闇へと消えていった。


 リコ達はラックづたいに前方へゆっくりと進むと、カランと缶が転がる音がした。無意識に視線を向けた瞬間、ナイフを持った巨漢の男がリコの背中めがけて飛び降りてきた。


「リコさん、上!」

 ポポが叫ぶとリコは体をぐるんと回転させ、回し蹴りでナイフを持った手を弾く。すかさず反対の足で男の顔面めがけて蹴りを入れるが、男はそれを腕で防御すると、太い腿でリコの腹部を蹴り上げ、リコは後方に飛ばされる。

 男は膝をつくリコに近づき、大きな拳を叩きつけようとした瞬間、別のものがその衝撃をさえぎった。


 シュウとわずかな煙を放つ拳の先に、ポポのドラムで鍛えた太い腕があった。

「あたいがいることを忘れているんじゃない? リコさん、ここはあたいにまかせて首謀者を追って」

 男は指をボキボキと鳴らしながら、ニヤリとほくそ笑んだ。

「ふん、お前のような小娘一人で人工肉体強化された俺の相手ができるとでも? 銃弾すら俺の体を貫くことはできない」

「はあ? あたいの本当の姿を見てから言ってくれるかな」

 ポポは小銃を投げ捨てるとハアッと気合の一声を上げた。体中の血管が浮き上がり筋肉が膨張を始め、筋骨隆々とした鋼の肉体へと変化を遂げた。

「あたいは近代気功戦術で急速身体剛化きゅうそくしんたいごうかが使えるのよ」


 ポポは両腕を顔の前に構えると、リズムよくフットワークを始めた。次の瞬間、男に瞬きする間も与えずに死角に滑り込み、みぞおちに深いボディブローをめり込ませた。男は顔を歪ませ、悶えながら倒れ込んだ。

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