義妹と同棲開始

 砂夜を部屋の中へ招いた。

 正直、女子を上がらせるなんて初めてだ。しかもウチの高校の生徒。なんだかイケナイことをしている気分に陥る。


 だがこれは保護・・だ。そう、あくまで保護なのだ。


 一応、義理の妹・・・・だし、問題はないはず。


「わぁ、本当に狭い。なんか秘密基地みたい」

「たった三畳しかないからね」


 それにしても、砂夜はスクールバッグを持っているくらいだった。荷物はあれだけか。


「ふぅん、でも素敵。ここで先生と一緒に暮らすんだ」

「あ、ああ。ベッドはロフトベッドだから、ちょっと狭いぞ。まあ僕は下で寝てもいいけど」


「この鉄の柵みたいなのがベッドなんだ。天井ギリギリじゃん」

「こうしないと空間スペースを確保できないんだ」


 普通にベッドを設置する方が圧迫感もないが、僕はロフトベッドを選択。この方が一段目にPCスペースを設けられるし、範囲も多少は広くなる。


「とりあえず、部屋を案内しよう。……と、言ってもたいしたモンはないけどね」

「ううん、見てみたい」


「まずはこの一室。ロフトベッドの下段にPC作業用のスペース」

「ここで資料を作ったりするんだ」

「そう。で、梯子はしごを登ればベッドだ。砂夜が使ってくれていい」

「ううん、先生と一緒に寝る」


「なっ……さすがにそれはマズイだろ。僕は当分、椅子で寝る」

「いいの、いいの」


 いいって言われてもなぁ、僕の身が持つかどうか。

 期待と不安が入り混じりながらも、僕はベッドと反対の方向へ。


「振り向くと直ぐにミニキッチンだ。普段はほとんど使わない」

「なんか小さくて可愛い台所だね」

「一応、IHが使える。たまに料理するくらいかな。基本的には外食だ」

「そっかぁ。たまに、わたしが作ってあげるね」


 にまっと笑みを向けられ、僕はドキッとした。砂夜の作る料理か……食べてみたい気もする。


「で、キッチンの収納スペースがいくつかあって、そこにハンドソープや洗剤やら細かいものが入っている。あと飲料水とかね」


「おぉ、案外しっかりしてる」

「まあね。あと床下収納もある。そこには防災グッズとか使わないものを収納してある」


 キッチン周辺の紹介は完了だ。


「こっちの扉が風呂とトイレだ」

「あ、ちゃんと別々なんだ」

「ああ、いわゆるユニットバスではないから安心してくれ」


「お風呂はどうなってるの?」

「シャワールームだけだ。だから、どうしても浴槽に浸かりたい場合は温泉を利用する。幸い駅前に健康ランドがあるからね」


「なんかビックリ。シャワーだけなんだ」

「極狭空間だからね、仕方ないさ。でも、その分、都内にしては家賃は安いんだぞ。これでなんと四万円だ」


「都内と考えれば安い方か」

「安いし、シンプルで良い。僕は無駄が大嫌いだからね」

「でたでた。先生、昔からそうだったよね。物欲無くて荷物少なすぎだし」


 そう、僕はアニメグッズだとか収集することはなかった。コレクター魂とか持ち合わせていない。ただ、最低限の生活が出来れば良いという思考なのだ。


 部屋に戻り、砂夜を椅子に座らせた。

 僕は床に座るしかなかった。座布団とかクッションもないから、ちょっとお尻が痛い。


「部屋紹介は以上だ」

「小さくて可愛い部屋だね。うん、二人の愛の巣にピッタリじゃない?」

「なに!?」


 二人の……愛の巣?

 砂夜の奴、何を言い出すんだ。

 ビックリした僕は、心臓バクバクだ。


 そりゃあ、女子高生と生活とか夢のようだ。しかも、砂夜はアイドルのような容姿で、とても可愛らしい。胸も大きくて……モテないわけがない。


「大丈夫だよ。わたし、先生の義妹だもん。それに、真剣なお付き合いをしていれば問題ないらしいから」


「ぶっちゃけ聞くけど、砂夜は彼氏とかいるんじゃないのか」

「は? いるわけないじゃん。先生、童貞のくせにそんな心配してるの。大丈夫だよ、先生を相手にしてくれる女の子なんて、砂夜わたしくらいだから」


 僅かに頬を紅潮させ、片足を伸ばす砂夜は――僕の相棒マグナムをグリグリと踏みつけた。


「かあぁぁああッ!?」

「先生って本当にザコね♡ そんな情けない声漏らしちゃって……だっさ♡」


「さ、砂夜」


「先生は、わたしのことだけ見ていればいいの。わたしも先生のことしか見ない。分かった?」

「……わ、分かった」


 僕は忘れていた。

 砂夜がドSであるということ。そして、そんな砂夜が好きであるということを。今日、思い出したんだ。

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