第29話「姪っ子を縛ってやりました……! キリッ」

 それ、魚人間の足ぃぃぃぃいいいいいいいい!!

 

(──ふぉぉぉぉぉぉおぉおおおおおおおお?!)


 なにやってんのポンタ?!

 なぁぁぁぁにやってくれちゃってんのぉぉぉおお!!


「しぃぃいいいいっと! 恵美の目を閉じろぉぉぉお!!」

「へ? いやいや─────────そ、それてってー……」



  『へっへっへっへ♪』



 ポンタくん尻尾ブンブン。

 庭を駆けまわりつつ、「生の足」を咥えて行ったり来たり───……。おう、シット!!


 ポンタ・ウェイト待てッ!!


「……………………………………『110』っと」


「ノォゥ!! ふぁっく恵美!! ぶっ殺しますよ!!」

「あ、もしもしポリスメーン?」



 シーーーーーーーーーーーーーーーーーット!!



「まてまてまて! 人の話を聞けぇぇぇええええええええええ!!」

 恵美さんに飛び掛かり、押し倒す高橋。

 だが、冒険者稼業で鍛えた恵美さんの抵抗はなかなかのもの!


 どす、ばき、ごす!


「きゃー、ちかーん、へんたーい!」

「いだ、いだぁ!! ま、負けるかー!!」


『もしもし?! もしもし?!』


 や、やばい、通話中だ!!

 やばい!! やばい!! やばーーーい!!


 さっさと恵美を拘束せねば―!


『わふわふ♪』

『もしもし? もし───犬の声? もしもーし!』


 うぉぉぉお! ポンタ会話してんじゃねーーーー!!


「ちょ、叔父さん! マジ重い───ちょぉぉ」

「やかましい───大人しくしろ、あだ!! ちょ! こ、こ、股間を……ぐぐ、ま、負けるかー!」


 恵美ぃぃ!

 ジタバタすんな!!


「ポ、ポンタ! あれ持ってきて! あれ!!そう───ひ、紐ぉぉおおーーーーー」

『わふわふ♪ わふ~ん♪』


 最近言葉を理解しているのか、ポンタ君。紐をとってきてもちゃんと理解してくれたのか、普段散歩のときに使っているリードを咥えて持ってきた。

 あぅち!! それ・・じゃないけど───……まぁこの際あり・・かぁぁあ!!


 『へっへっへっ♪』


  散歩♪ 散歩♪


 その目が散歩いきたいと伝えているが─────……違うぞ、ポンタ! 許せポンタ! これは、今から姪っ子を縛るのに使うんじゃーーーー!!


『わふッ?!』

「きゃー……縛られるぅ」


 ……って、お前はなんでちょっと楽しそうやねん!

 この空気とタイミングを読まない、可愛い姪っ子がぁぁぁあああ!

 縛ってくれるわぁぁぁあ!!


「ふんッ!」


 ギュリギュリと、抵抗を続ける恵美をグルングルンに犬のリードで縛って、部屋の隅に転がしておく───……「ふぅぅ……」


 いい汗かいたぜ──────……って、




  ……エロっっっ!!




「エッロぉぉぉお!」


 恵美さん、アナタとっても────エッロォォオオいいいいい!!



 なんか、制服姿セーラー服のJKが犬のリードで縛られて部屋の隅に転がってる絵面ぁっぁぁああ、超エッローーーーーーーーイ!!


「もがもがー」


『もしもしぃ、もしもーーーーーし!!』

『わふわふッ、わふわふぅッ♪』


 高橋が大暴れしている間に、ポンタはスマホからこぼれる音に興味津々だ。

 だが、それが功を制したらしい。


『あーもー。いたずらですかー?』

『わふわふっ、わぉぉぉおおん♪』


 …………ナイスぽんた!!


『わんわん。わんわんおッ!』


 いけ!

 そのまま、ごまかせぇぇぇ!!


『ったく、誤作動ですか? もしもしぃ!』

『わんわんおッ』ぽちー


 ついには、パクっとスマホを咥えたポンタによって通話が途切れる───ナイス!!


 ……多分、ナイス!! ナ、ナイスだと思う。そう……ナイスと思おう!!

 この後、番号検索されそうだけど……あとは誤魔化すしかねぇ!


「もがもがー(スマホがー)」

「スマホがーじゃねぁ! 馬鹿垂れぇ!」


 すぱーん!


 なんでぇ?

 なんでこの子はすぐ警察呼ぶの?!


 そんなに俺に前科つけたいのぉぉぉお?!


「はぁはぁ……疲れる。コイツが来るとマジで疲れる─────────……あー」



 『へっへっへっへ♪』


 

 た、頼むよポンタ君。

 そんな顔して、「足」咥えて持ってくるのやめてくれないかね?


 俺が、足を「ほ~らとってこ~い♪」って投げる様に見える?

 そんな猟奇的な飼い主に見えるぅ?!


 ま、まぁ。

 青白いし、ちょっと生臭いので明らかに人間の足じゃないんだけどね───……。


 逆にリアル!!

 めっちゃリアル!!


 ほらぁ、姪っ子がすっごい怯えた目で見て──────ねぇ!……この子、全然怯えてねぇ!!


「じとー」


 ほらぁ! じとーとか口で言ってるし!!

 普通さぁ! 身内とはいえ、家のなかに切断された足とかあったらびっくりするじゃん?!

 猟奇殺人の証拠とか思うじゃーーーーん?!


「あぁ、もう!! どう説明したらええねん!!」


 つーか、どうしよう。

 どうやって収拾つけよう……。


 足は転がってるし、家は臭いし、庭にはデッカイ穴があるし、犬小屋はダンジョンだし、姪っ子縛っちゃったし──────!!



「あああああああああああああ、もーーーーーーーーーーーーーー!!」


 ガラッ


『高橋さーーーーーーーーーーん! うるさいですよーーー! あと、臭いし、なに女子高生連れ込んで縛ってるんですかぁ! 引っ越ししてくださーい♪』


「うるっせぇっぇええええええええええええ! もーーーーいっぱいいっぱいなんだよ、こっちはぁっぁあああ!」



 あード畜生!

 もう、全部埋めちまいてぇぇ!


(案外……こうして、この世には猟奇殺人が起きるんじゃなかろうか?!)


 もう、マジでいっぱいいっぱい!!

 つーか、あのオバちゃんの度胸もすげぇな?!


 このくっせぇ臭気の中、家の中で女子高生が縛られてるのに、窓開けて怒鳴るだけ・・・・・って……。


 しかも、引っ越ししろぉ?!

 ふ、普通、通報しないぃ?!


 ───いやさ、してくれなくれて助かってるけどぉぉぉぉおおおおおおおお!


「畜生……! もう、マジで埋めるか?」

 デッカイ穴ほっといたし、恵美を埋めて、オバチャン埋めて──────「誰を埋めるって?」


「そりゃ、全部──────って、恵美さぁぁん?!」

「ごほん……。縛りがまだまだ甘いよオジサン。……それより、そろそろ説明して欲しいんですけどぉ───姪っ子縛っといて、てへぺろーで済むとお思いで?」


 て、てへぺろー


「え~っと、リダイヤル───」

「さーーーーーせん!!!」


 恵美さん、さーーーーーせんんんんん!!


 高橋は綺麗な土下座をきめて、仁王立ちする姪っ子にひれ伏したのだった。

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