第28話「姪っ子にバレたので……」
「あっれれ~? おっかしいなー」
銀行口座を再度確認する高橋。
PC上でも残高が確認できるのは便利な時代になったものだが、おかげで入金の遅れがリアルタイムでわかるので違和感が尽きない。
……というのも、新種登録の報酬金が振り込まれなくなったのだ。
オマケにメールに既読すらつかない。(ブラック企業時代のくせで、会社のメールにも既読確認のタブにチェックを入れておいたのだ)
『……わ、わふ?』
「いや、ポンタが悪いわけじゃないよ」
一回の作業部屋で『へっへっへ♪』と舌を出しながら首をかしげるポンタの頭を撫でつつ、解体機に備え付けのPCをもう一度確認。
……うん、送信済みだ。
「っかしいなー。今まではすぐに振り込まれてたのに……」
一体あたり10万円強───およそ1000ドルの報酬だ。
国際銀行経由だが、こんなに遅れたことはこれまでになかった。
「んーむ、ポンタのおかげで、またまた5体もの、新種っぽいの登録したのになー。もしかして新種じゃなかった??」
『わふん……』
しゅ~んとしたポンタ。
なでなで
……しかし、あれが新種じゃなかったというのだろうか?
海産物が食べたいなーと、言ったその日のうちにポンタが犬小屋ダンジョンから狩ってきた大物。
なんというか、
魚に足の生えた超グロイ生物。
あんなの「モンスターWiki」に乗ってなかったから絶対新種だと思ったのに。
近いところで言えば
ポンタが狩ってきたのは、昔見た南国を舞台にした少年漫画にでてきたアレに似ている。
ちなみに、味はね………………ビックリするぐらい旨かったよ!
食べたのかって??……食べましたが何かっ?! キリ
だって、足だけ切り落としたらほとんど高級魚にしか見えなかったんだもん───ビチビチしていたので新鮮だったし。
うん、刺身にしたり煮つけにしたりしました……旨かった。
───まぁ、足だけはね。
さすがにね。食えないね……。
だって、見た目まんま人の足だもん……超グローイ!
これは、空き次第、コンポスター行きだねー。
なにせ連日の新種処理のせいでコンポスターがフル稼働で転生準備待ちなのだ。
昨日から大物が何体もコンポスターにかけられている。
だってポンタ君、このところ毎日毎日狩り過ぎ。
魚のほかにも、チロチロと炎みたいな息を吐いている犬っぽいヤツとか、
ライオンっぽい首と蛇の尾とヤギの頭をした獣とか……あと、8本の首を持った蛇とかさー!
こいつらって、どう見ても新種でしょ?!
なんか、イメージもろ湧きだったから、命名権使って、それぞれ『ガルム』、『キメラ』、『ヒドラ』とか付けたよ!!
あと、これ───……。
ジューーーーー……!
「うん、これも旨い……」
チキンステーキっぽく料理中なのが、昨日ポンタ君が狩ってきた魔物です。
旨いんだけど───これ、じつはモンスターでーす!!
なんと、見た目はデッカイ鶏!…………と蛇の下半身でした!
「つーか……これなんか、絶対アレだよね?」
そうアレ……。鶏の身体に尾が尻尾の化け物───『コカトリス』。
もちろん、新種だ。
ファンタジー世界お馴染みのモンスターの大半は、いまだモンスターWikiに登録されていないのだ。
ゴブリンとかノーマルのオークくらいなら結構多数見つけられるみたいなんだけどねー。
あとは、ファンタジー小説でも見かけないようなモンスターは結構Wikiに登録されている。
むしろ、逆にそういったモンスターのほうが、下層には多いみたいだ。
なんか「緑色の犬っぽい奴」とか「毛のない猫みたいな魔物」とか、あとはコボルトとかそー言うのが登録済。
他にも蟲系? デッカイ蜘蛛とか、ながーいバッタとかね。
あーいう、見た目はグロイやつは、見た目だけで実際には弱いのか、主に下層や中層で出現するらしい。
「……なので、むしろこーいうのが新種だと思ったんだけどなー」
半分に切られた鶏と蛇の魔物。
ちなみに、
───ゴリュゴリュゴリュ
……下半身の蛇は絶賛肥料に転生中。
さ、さすがに蛇を食用にはするのは、ちょっと勘弁。
おっと、それよりも、
「うーん……ダメか。やっぱ新種登録───先を越されたのかなー?」
何度確認しても、新種登録料は振り込まれている形跡はない。
いっそ、国連のダンジョン研究所とかに問合せしたいところだけど、かなしいかな───英語がわかりません……。
せっかくポンタが狩ってきてくれたのにねー……。
『わふぅ……』
なでなで
「はは、これでもお前には感謝してるんだぞ」
……ぶっちゃけ、ほとんどポンタの稼ぎなので、高橋はヒモ状態です。
飼い犬のヒモ───とか、日本語的におかしいけど、事実なのよねこれ。とほほ
だ、だってさー。ポンタにwikiを見せてやりながら「ここにいない奴を捕ってきてー!」って注文したら、本当に捕ってきてくれたんだもん。
そりゃ頼っちゃうでしょ?
…………思うに、最近のポンタ君、日本語を理解してる気がする───。
まぁ、たま~~に……? いや、割と頻繁に?───とーんでもない行動してくれるけどね。
ほら、この前のドラゴンとかねー!!
あ! あと、生きたまま連れてきてくるのは勘弁してほしいなー……。
肉が新鮮なのはありがたいけど、グロイし、怖いし、なにせグロイ。(大事なことなので二回───以下略)
ちなみに、コカトリスに至っては死の危険すらあった。だって、あの鳥野郎──マジで石化させて来るんだもん!!
おかげでリースで借りて来た小型ショベルのアームが石になっちゃったよ……。
コカトリスの野郎、まるで「死なばもろともー!」と言わんばかりに、
いやー……直撃していれば高橋もやばかっただろう。
「あーぁ───かわりに小型ショベルが
さすがにお金が持たない。
最後に庭にデッカイ穴を掘っておいたけど、これ……どうみても、戦時中の集団墓地だよね??
デカすぎる部位を埋めて隠すために掘ったけど、知人に見られたらなんて言えばいいんだろう……。
というか、そろそろ庭がキャパオーバーだ!
これ以上、埋めきれん!残った面積はすべて畑になっちゃったし……。
「───……なにより、くっせーーーーーーーーー!」
もう、何この匂い……。
地獄? 地獄の匂い??
……残暑厳しい季節だし。
あっという間に腐敗したモンスターの肉が、埋めたそばから臭ってくる。
これはそろそろ、衛生的にもやばいのではないだろうか……。
そのうち通報されたり──────。
ピンポ~~~~~ン♪
「ふぁゎおぅ!!」
……ビックゥ!
思わず変な声がでちゃう高橋。
また、近所のおばちゃんがクレームをつけに来たくらいならともかく、昼間っから呼び鈴を押すような奴って……。
「うわ、なに?! この家くっさ!」
「……って、やっぱお前かーい!!」
あと、俺入っていいって言ってないからね───それ不法侵入だからね! 恵美ぃ!!
「いいじゃん、可愛い姪っ子が───」
「──自分で言うな!」
ズビシッ!
すかさずチョップ。
「……ってなにぃぃい!」
サッ!
「ふふん、中年のオッサンの攻撃くらいかわせない恵美さんではないですよ──────っていうか、マジくさっ!」
何、この匂いッ!
「ちょ、ちょっと叔父さん?! これやばいよ? 死体でも埋めてんの?」
「ぎく!」
「「………………」」
「なに、ギクって? まさかホントに……。あ、あと風呂入って───」
「風呂には入っとるわぁぁぁああああああ!」
………………。
…………。
「───
どきっ!
「……ご、ごほん」
「じー」
おっふ……そんなに見るなよ、叔父さんドキドキしちゃうだろぅ。
ジト目の恵美さんに汗をダラダラ流す高橋。
「じー……」
くッ……。
こ、ここは何と言ってごまかそうか───……。
「あー……その、なんだ。刺身くう? あと、チキンステーキあるよ」
そう、無難に───。
「食べゆ」
って、チョロ!!
この
「……お、おう。まかせろ─────今日は高級魚(?)の刺身と…………ぉぉおおおおお!?」
思わず変な声の出ちゃう高橋。
だ、だって……。
「───びっくりしたー!? なに、急に変な声出して……って、あれ? ポンタ何咥えてるんの?」
『わふわふっ♪』
ひ、ひぇええ……!
ぽ、ぽ、ぽ、ぽんたーーーーーーーーーーー!!
恵美さんが遊びに来て嬉しいのな、テンションマックスのポンタ君!
それ、魚人間の足ぃぃぃぃいいいいいいいい!!
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