第23話「獲物その6…………ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ポンタぁっぁあああああああああああああ!!」


 なぁにやってんの?!

 こーーーーれどうすんの!?


「くびぃぃぃいいいい!! しかも、上半身残っててグローーーーーーーーイ!! そして、デカイ!!」


 黒くて、くさくて───……ひたすら、デカッ!!!


 いまだドクドクと鮮血を滴らせるドラゴンにドン引きする高橋。

 っていうか、ドラゴンでいいんだよね? これぇえ!


「うッわー、くっさぁ!! 血の匂い、くっさぁぁぁあああ!」

「高橋さーーーーーーーーーーーーーーーん! なんか臭いですよーーーー!!」


「うるせぇ、ばばぁ!」


 すんまっせーん!


「口に出す順番間違ってますよーーーーーー!」


 あ、しまった。

 謝ってから、心でババァ呼ばわりするつもりが、先に口に出しちゃった……って、それどころじゃないよ!!


「これは片付け大変やでぇぇええ!!」


 もーーーーーーめんどい!!

 めんどい───けど、


 ……こ、これ絶対新種だよね?

 多分、というか絶対新種───……ってことは、イェス!!


「10万円ゲットだぜぇええ!」


 ちょっと小躍りしたくなる高橋。

 ……庭、凄いことになってるけどね。


「あー……でも、マジで片付けどーすんだよ。こんなでっかいの小分けにしないと解体もできんな」


 庭の4分の1を埋め尽くすドラゴン(?)の首とその他もろもろ。

 血とかいろいろ凄い……。


「し、しゃーねぇ……。ユンボ・・・借りてくるかー」


 高橋は前の会社の伝手で何度か扱ったことのある小型ショベルを運用することにした。

 手作業ではどうやっても無理なことは明白。

 ならば、機械力を頼るのみ!!


 と、いうことで───。


 急いでリース会社に連絡すると、二つ返事で了承してもらった。

 どうやら、向こうは向こうで不景気らしい。

 ダンジョン開発に重機はあまりお呼びではないからね……。


「よし……ちょッパヤで借りてくるからな! ポンタは大人しくしとれぇ!」

『わふわふっ!』


 元気いっぱいのポンタに見送られ、汗だくのままチャリを走らせると、

 短期間のリースなので、相手先では割とお安く済んだ。……ありがたい!


 さらに、相手先は軽トラごと貸してくれたのはありがたい。実にありがたい!!


「さーて、急ぐぞ……時間との勝負だ!」


 無事にリースできたものの、その間、高橋家は無人なので急いで帰ることにする。

 庭がとんでもないことになっているが、もうここは誰も来ないことを願うしかない……。


「うぉぉぉおお! まっとれぇぃ10万円んんんんん!!」


 軽トラに、大急ぎでチャリと小型ショベルを積んで帰ると、庭に小型ショベルカーを持ち込む。

 そして、慣れた手つきでレバー操作。




 ゴンゴンゴンゴンゴゴゴゴゴゴゴゴゴ───。




 さすがコ〇ツ製!

 中古なのに快調に動くぜ───!


 ガチャ、ガチャ!

「イケ!! 10万馬力ぃぃいい!」


 熟練のレバー操作でドラゴンの残骸に近づくと巨大な鉄の爪で──────……って、かったッ!



 ──ガァン、ゴォン!!



「硬ッ!!……なにこれ、かったぁぁぁああああ!!」


 ゴンゴンゴン! と、繰り返しショベルの刃を果てるがびくともしない。


 なにこれぇ?!


「ええええええ?! うっそぉぉお?!」

 さすがドラゴンとでもいうべきか、まさかのショベルカーの刃を弾き返すほどの強度とは……。


(ど、どうしたらええねん!!)


『わふっ!』

「ポンタ邪魔─────って、それはぁッ!!」


 これを使えとでもいわんばかりに、ポンタが咥えて来たのは、いつぞや手に入れたオーガの鉈だ。

 そういえば、頑丈なオーガの首も簡単にチョンパしたな。


 な、ならば、もしかして──────……。






 ゾンッ───!






 できたぁっぁああああああ!!


「すっげぇぇぇええ! オーガの鉈すっげぇっぇええ! あーもう、スッパリと切れたぁぁああ!」


 ショベルの刃に鉈を固定してみてびっくり!

 あれほど硬かったドラゴン(?)の甲皮を安々と切り裂いて見せるではないか。


「こりゃいい! どんどんいこう!!」


 ゾンゾンゾンッ!!!


 見る見るうちに小分けにされていくドラゴン。

 これくらい小さくできれば前の会社で使ってたあの解体機でも作業できるだろう。

 あれについている刃は人工ダイヤモンド製で最高の硬度を誇るから、切れないはずもない。


 しかし、ここで問題発生…………かった!!


「うわ! さすがに、頭は頑丈だな! 切れそうだけど、骨と甲皮の間隔が近すぎで、ショベルのパワーだけじゃ……クソっ!」


 ガッツンガッツンとショベルと鉈の刃を叩きつけるが、皮膚は傷つけられても、骨まで切れない。


「あー……ダメだ。やり過ぎるとショベルが壊れる」


 うん……しゃーない。

 しゃーないので、ザ・隠ぺいを発揮───。


「こんなときは、埋めるに限る!!」


 せっかくのショベルだ。

 リース代分くらい使い倒そう。


 高橋は巧みなアーム操作であれよあれよという間に庭を掘削。

 結構な深さの穴を掘った。しかし、途中でゾリリと嫌な感触。


「あっぶ……! す、水道管に穴開けるとこだったー」


 すんでのところで表面を削るだけで事なきを得たが、アーム先端のバケツ・・・の刃が水道管を貫通するとこだった。


「これ以上は掘れないか…………。しゃーなし」


 本当はもっと深く掘りたかったのだが、やむを得ない。

 ちょっと、口の先とか角が出ちゃうけど、なんとかドラゴンの首を穴に押し込むことに成功。


 ……ちょ~~~~っと、先端がでてるのはご愛敬ということで。


 残暑が厳しいから、すぐに腐ってくれるはず───匂いはまぁ……うん。


 とりあえず、解体という名の隠蔽をすませた高橋はいい汗かいたぜーとばかりに額を拭う。

 庭中が血だらけだけど、その辺もショベルで漉き込んでいけば無問題もーまんたい


 ついでに、オーク肥料とオーガ肥料も完成していたので、庭に漉き込んでおいた。


 ……あとで種でも蒔こう。

 ドラゴンが腐ってきたら、肥料の匂いということにすれば誤魔化しも聞くし、一石二鳥だな───。


「あー……新種登録でもっと稼げたら、この際、ユンボ買い取ろうかなー」

 

 なにせ、ポンタは大興奮でショベルの周りを駆けまわっているし、あると超便利だということが判明したからだ。


 今後もポンタが大物を持ってこないとも限らないし───……バリバリバリ。




「あ、なんか潰した?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る