第19話「姪っ子に顔○しました」

「ぶっほぉぉおおおおおおおおお───」

「ぎゃぁっぁああああああああああ!!」


 流し見ていたテレビの音声に思わず吹き出す高橋。

 もちろん、直線状にいた恵美に盛大にぶっかけ・・・・ることに……。


「あッッッッッッッつ!!」

「え? 嘘?! マジ?! 嘘ぉぉぉお?!」

「あッつ、あッつ、あッつーいん♡」


 目の前でお茶を被って、悶えながらストリップを始めた姪っ子のことなど知らぬとばかりに、顔面真っ青になる高橋。


 ───おぇぇっぇええええ!!


 めっちゃ食ったがな!

 めっちゃぁあ!!


 マ、マンドラゴラどころじゃないよ?!

 オーク肉もここ最近で食いまくってるよぉぉぉお?!


 えええ?!

「く、くくく、食ったら死ぬの?! 吐血するのぉぉぉおお?!」


「と、ととと、吐血どころじゃないわよ!! あっつー!! あっつ!! あっつ~~~~~~ぃん♡ & くっさ! そして、きったなーーーーい!!」


 やだぁ! やだぁ!! 死にたくなーい!!

 

 ジタバタと悶絶する高橋。今さら口に手を突っ込んで吐いても時遅し───。


「あぁあもぅぅ!! か、可愛い姪っ子になんてことを、あっちぃ!! くっさい!! あーーーもうーーー、べたべたよぉ!」


 ……いや、だって吐血して死ぬんだもん!

 姪っ子が臭くてベタベタとか知らんわぃ!!


 そんなことより、

「や、やべぇ! やべぇ! やべぇって!! 食っちゃった……! 俺、マンドラゴラとオーク肉食っちゃったよぉぉおお!! サラダとステーーーーーキでっぇぇえ!! 」


 死ぬの?

 吐血しちゃうのッ?!


 口から、血ぃ吐いて死んじゃうのぉぉぉおおおお?!


 ゆらーり


「…………イェ~スYES。そーよぉ、そーよーーーー……。アンタはね、吐血して死ぬのー。口から盛大に内臓と一緒にねぇぇぇ、叔父さぁぁぁん……! っていうか、死ねぇぇぇええええええええええ!!」


 今すぐにぃナァウ!!


「う、うぉぉ!? なんだ、恵美?! なんで脱いでるん?! お、叔父さんでも、さすがに姪っ子は───」


「じゃっかましいわ!! ぶっ殺してやるぁぁぁあああ!!」


 セーラー服を脱ぎ捨てた恵美が、ものすっごい形相で拳を作っている。


 っていうか、振りかぶっている!!


 すっごい腰の入った世界を目指せるパンチを放とうとしているぅぅぅう!!


「ちょぁぁああ、ちょ、ちょ、ちょ! タンマタンマ!!」

「やかましやぁぁああ! 誰がタンマするかぁぁあ!」ブォン!!


 は、早い!


「恵美さん?! グーはあかん!! つーーーーか、速ッ!」


 何そのパンチ?!

 すっごい、速い?!


 恵美さん、

 早い、速い! はやぁぁぁああい!


 辛うじて躱すも、おっぱいで顔面ワンパン!!


 スパーン♪

「って、いったっぁあ……っくない?!」


 ありゃ?

 むしろ柔らかくね??


 って、恵美ぃ!!

 ……お、おっぱい凄いことになっとるで?!


 ブルンブルンッやでぇぇえ! あーーーーー眼福ぅ! じゃない、吐血吐血!!


 ……って、そうじゃない!!

「ちょ、ちょっと、待てって! マジで待てって!! な? いったん落ち着こッ! な?……じゃないと、叔父さん死んじゃうから、」


 ……んん───待てウェイト!!

 ステイ、恵美!!!


「だれがステイじゃ!! 犬とちゃつわぁぁ!!

 そして、死ね! 今すぐ死ね!! 今宵、高橋家の叔父は、死んじゃうんだよぉぉぉおお!──そして、殺してあげるよぉぉぉおおッ!」


 あ、あかーん、恵美の目が据わっとる……。

 い、いや、それよりもまずはスマホだ!


 どんな時でも、スーマーホ!

 恵美が脱いでようが、まずは吐血だ!!



 ぴこぴこ、ぽちー



  『オーク肉』 『吐血』



 こ、これだぁっぁああああ!……って。


   ……ブル・シットド畜生


 『吐血するほど旨いッ!』じゃねーよ! 誰も味のこと検索してねーよ!

 なにが、極上の豚のごとし───じゃぁぁあ!!


 くっそーーーー!!

 死にたくねぇっぇええええ!!



  『ですが、それは──特殊なケースですね。

   ……よほどの量を、初めて大量に、

   一度に採った場合に限られます。

   それ以前に、少量を口にしていれば、

   自然と適正が付きますよ。

   ま……その場合は耐性といった方が

   いいかもしれませんね』



 た、耐……性……??



「───……パードゥンなぬぅ?」


 テレビの内容にハタと停止する高橋。

 どうやら、吐血して死ぬというのはよほど極端な場合の事らしい。

 ……極端に大量に食べた気もするが、吐血していないということは高橋にも適正があったのか───……あるいは、



 「……あ! そうか、前の会社で───」


 モンスター素材の解体時に出て来た端肉を食った覚えがある。

 あれ、結構うまかったなー……そうか、あれ・・のおかげで『耐性』ついてたのか。


 でも、下手したら吐血して死ぬようなものを食わせてたのか、あの会社──────こわっ!!


 改めて、前の会社こわッ! & ブラック!!


「……まぁ不幸中の幸い、か? 糞みたいな会社だったけど、今だけは感謝感謝───……ん?」


  『なので、

   私は念のために家族や知り合いには、

   ダンジョン産の食事を振る舞うように

   しているんですよ。

   まぁ値は張るんですがね、

   それでも安全には代えがたいと──ww』


「wwじゃねーわ! ビビらせやがって……!」


 …………つーか、あれ?

 そーいや、こいつどっかで─────。


 テレビの中で得意げに話す、専門家のオッサン。

 とはいえ、顔には見覚えがないんだけど───なんだろ? この喋り方……。






    …………あ、コイツ。





 ぐわし


「え?」

「叔父さん」


 ニコッ


 あ、そーいえば恵美さんいたんだっけ……。

 つーか、なんで顔面握られてんだろー??


「ど、どーしたのかな? 恵美さんや?」

「どうしたんだろうねー?? どうしたんだと思うー??」


「……あ、え~っと?? ふ、服! 服は着た方がいいぞ??」

「そーね」


 あ、あれれー?

 恵美さんの顔が怖いよ?


「じゃー……問題。なんでアタシが服を脱ぐ羽目になったでしょ~か?」

「え、ええー? な、なんでだろ……? あ」


 痴女ってやつか!!


「……………………にこっ」

「え? なんで笑っ───」


 凍り付いたような笑顔で、通学カバンに手を突っ込む恵美。

 無言のまま、すー……と取り出したるは──。


「お、おっふ。恵美さん?……そ、そのぉ、カバンから出したデッカイハンマーみたいなの、なに?」


 柄の部分が折りたたみ式になっているのか、カバンにコンパクトに収まるらしい。槌の部分は凶悪なまでにデカいけど───。


「……これ? これはねー。ゲイ・・・ボルグ」


「おーう……ゲイボルグね。え?……あれって、『槍』じゃなかったっけ? なんか、北欧神話かなんかの───あと、なんで『ゲイ』を強調したのか知らんけど───うん、可愛いじゃん」


 ニコッ


 女の子って、やっぱホモぉとかゲイとか好きなんだねーHAHAHA!

(……っていうか、そんなもん通学カバンにいれてるん?!)


「でしょー? これで、ね───こうー……ぐしゃっと」ニッコリ


 ぐ、ぐしゃ……と?


「な、なにを?」

ナニ・・を」



   即答ぅッ!



 ……おーう。

 ナニって、あれだよね? ナニ男性のシンボルのことだよね?



 「あ、あぁ~! それでゲイ・・・ボルグ!」



 ナニをつぶしてゲイ量産───……。

 なるほどなるほどー!!


 …………。


 ……。


「って……。ホワイ??」


 えっと~、ち、ちなみに───。


 だ、

WHO誰の?」


YOUお前の」ニコぉ


OHOHへーIT'S mine俺のかぁ」にこッ


 「えへへ」と、

 ぎこちない笑いを浮かべる高橋に───。



 すぅぅ、

「──女子高生に、茶ぁ……ぶかっけて顔射して一言も詫び無しかぁぁ!!」

 ひぇぇ?!


 ──ぶっ殺してやるぁぁっぁああああああ!!



 ぶぉんんッッッッ!!


 大上段にゲイボルグこと、大型ハンマーを振り上げた恵美。

 すかさず、高速の土下座をかます高橋。


 両者、その形の美しいことと言ったら、もう!


「…………だが許さんッ!」恵美さん、容赦なし


 ああああああああああああああああああああ!

 そんまっせんんんんんんんんん!!



 高橋の悲鳴が、うららかな昼下りに響き渡る……───。



『……くぁぁぁあああ、わふっ』


 朝っぱらからうるさい愚かな人間の騒ぎなど知ったことかとばかりに、ポンタは日向ぼっこを楽しんでいた。




  ※ ポンタの戦果:なし ※



 《料理:オークステーキ

    (マンドラゴラおろし乗せ)


     マンドラゴラのサラダ


     マンドラゴラのスティック

    (塩or味噌マヨネーズ)


     マンドラゴラ葉茶

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