第14話

 ええ匂いやった・・・!


 オマハンはドキドキ上気した


 嬉しかった


 サモン・ド邸の前庭でつまずき倒れかかったアリンスを抱きとめたオマハンは、興奮さめやらぬまま、何食わぬ顔で、


「一礼して、元の立ち位置に戻る」


 と低く言って一礼し、使用人たちの列に戻った


 アリンスがエントランスホールでサモン・ドに迎え入れられると、使用人たちも背すじに込めていた力を抜いて、屋敷へ戻っていく


「庭園での晩餐が始まるまで、われわれはひとまず手空きだね」


 歩きながら、エキスバトンが話しかけてきた


「ご令嬢と旦那様がおくつろぎの間、どうだろう? われわれも軽くリラックスしないかい? いま流行りの“tスポーツ”で」


 tスポーツ・・・?


 オマハンは聞いたことがない


 アリンスのことが気になったが――彼女はサモン・ドに案内されて図書室でお茶だし、あそこは司書たちと限られた者しか入れない


 初耳の流行り物なら、触れておきたい気もする――


「俺、やったことないぜ?」


 さりげなく答えたオマハンに、エキスバトンは快活に、


「心配いらないさ! ルールなんて気づけばもう覚えてる! みんな教えたがりだからね!」


 そこで、オマハンは参加を表明した


 大間違いだった


  (第15話に続きます。カテゴリは“SF”に移行――)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る