第13話
誰かが言った
「そうだ! 彼らは心がひとつになっていたはずさ!」
誰かが叫んだ
「僕たちカンタータを含め、みんな全員“想いはおなじ”だったはず――!」
目がうるんでいた
声が濡れていた
セリフがというより、雰囲気と表情が、すでにもう、あかん・・・!
思えば、最初の“人の持つ人間らしさ”の時点でやばかった・・・!
「“境界事例”――“トロッコ”」
異舌審問官が、次の論題に移った
「暴走する
答える被検者たちは、もう、水を得た魚だった
「そんなの決まってる! “絆を信じて”レバーを倒す!」
「いや“絆”じゃない! “絆を超えた祈り”だ!」
「やっとわかった気がする・・・! われわれは“信じたい”んだ! “人と人、そのつながりの可能性”というものを――!」
「ええい! 涙をうかべて言う! 『感動に、感謝・・・!』」
「同じく言う! 『元気がもらえた・・・!』」
これらの何が、こうもうぶ毛を逆立てるのか――?
オマハンは自分でも上手く言語化できない――
『今という時代は、時としてバケモンを産み出すんえ、バケモンの群れをば』という、ありし日の師の言葉が思い出される――
“グリマルキン異舌審問法”――!
なんちゅうもんを考え出したんや・・・!
こんなん、恐ろしすぎる・・・!
“限界を超えた擬態”――で、オマハンは耐えた
心の足腰がぐにゃぐにゃになるまでに消耗したが、この地獄のようなグループワークを、熱狂と感涙の皮をかぶったまま、最後までしのぎきったのだ――
結局
ヴェイル審問官は、オマハンたちのグループからも、そのほかのグループ群からも“異舌者”をあばき出すことなく、革表紙の書物とともに緑色の公用車で帰っていった
幾日かが過ぎて、屋敷はついに、大統領令嬢訪問のときを迎える――
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