第10話
「はーい、次のグループのかたー」
“
審問の場とされたサモン・ド邸の娯楽室に、新たに招じ入れられた使用人の数は8名――
オマハンもそのひとりだったが――
いま、のろのろと娯楽室へ歩み入る彼の心臓がどうしようもなく縮み上がっているのは、何も審問にさらされるのが初めてだったからというわけではない
これまでに幾度となく、オマハンは審問官たちが巧妙に張りめぐらす数々の言葉の罠をすり抜けてきている
たとえば、じゃんけんを「インジャン」と呼んでカマを掛けようとしても無駄だ
オマハンは完璧な公用語を使って、しらを切り通す――
だが、そんなオマハンにとってさえ、こんな異様な審問は前代未聞だった
こんな――「集団面接形式」の“異舌審問”は!
なんかわからんけど・・・これ・・・!
ヤバいんとちゃうん・・・!?
「楽にしてくーださいっす!」
オマハンたち使用人が足を踏み入れた、娯楽室の中央奥――大人数用カードテーブルの向こうに座る、やせた不健康そうな男が気の抜けた声で言った
濃緑に金の縫い取りの入った法服を着たその男の前には、革張りの書物が一冊、重たげに置かれている
見つめるオマハンたちを淡く見返しながら、男――“異舌審問官”は笑みをにじませて言った
「ささ、テーブルについてくーださいっす! 始めまーするっす!」
「はいっ! わっかりまーしたーっす!」
審問官を除いた全員がぎょっとして、口真似で応じたその大胆な人物を見た
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