第6話

「……マルト、聞こえるか? 応答しろ」自分を呼ぶ声に目ざめ、マルトは朦朧とする中、その声の元を探した。

「……ダリル?」そこにダリルの姿はなく、耳に取り付けたままのマイクロデバイスからの雑音だった。

「はい、聞こえています」

「トランスビーストが出現した、場所はローヌ街十三番通り。そちらにオートスピーダー自動高速艇を向かわせた。管轄外だが応援要請が入った、すぐに現場に急行してくれ」

「ローヌ街? わかりました」ダリルが巻き込まれていないかと不安が頭をよぎった。


 マルトはベッドから這うように起き上がると防水コートを着込み、窓の外をシャッターの隙間から覗いた。雨が激しく打ちつく道路にはすでにオートスピーダーがライトを点燈させながら待機していた。

 急いで部屋を出て階段を下ると、入口正面に浮遊するオートスピーダーにまたがり、声をかけた。

「オーケー、出してちょうだい」

 オートスピーダーは推進ノズルから灰煙を吹き出すと垂直に上昇し、鋭利なフロントカウルが豪雨の闇を切り裂いていった。

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