第2話

トランスマインド変心ナイトソウル騎士の魂

 触肢が女の体に接触すると金属を叩くような鈍い衝撃音が鳴り響き、触肢はボキリと折れ曲がった。キィという金切り声が、吹き上がる蒸気の中でこだまする。

 

 怪人が女に目を向けると、そこにははがねの鎧をまとい、漆黒の槍を手にした古風な騎士が立っていた。

 触肢を大きく広げ叫びながら威嚇すると、女はその隙を縫って怪人の胸元に飛び込み、硬い甲殻で覆われた胸部を槍で貫いた。

 怪人から黒いしぶきが吹き出し、水溜みずたまりの中に倒れ込むと、自らの体をその色に染めながら、やがて静かに動きを止めた。

 百六十秒経つと女は元の姿に戻り、がくりと膝を突いてその場で吐血した。ぜえぜえと息を切らしながら、むくろを見下ろした。触肢は枯れたように朽ち果て、その顔はやつれた青年のものだった。


「……任務完了、帰署して報告書を提出します」

「エアトランスポーターをそちらに向かわせた。トランスビーストの回収もお願いする」

「了解」

 上空から輸送艇が着陸するとガルウィングのハッチが開き、防護服を着た数人の作業員が躯を担架に乗せると、足早に艇内に運び込んだ。

 全員が乗り込むと、輸送艇はパトロールライトを点滅させながら浮上し、摩天楼の明かりが灯る方角に飛び立っていった。

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