第2話 突然届いた贈り物

 本社の資材倉庫に寄っていたら暗くなっていた。資材倉庫にある物を片端から見せて貰い、特徴や用途、注意事項などを教えて貰っていたのだ。快く時間を割いてくれる倉庫番の本間は美葉にとって京都で一番の味方である。帰り際に本間が松茸昆布の佃煮をくれたので、それをお供に夕食を済まそうと思う。


 京都の梅雨はしとしと雨が降り注ぎ、湿気た空気に汗が噴き出してくる。京都に来て三ヶ月が経とうとしている。人の多さや、おっとりとしていながら忙しない独特のテンポにまだ慣れることが出来ない。空は建物で小さく切り取られているから、余計に息苦しくなる。


 大通りからアパートへ続く路地へ入ると、宅配業者のトラックが止まっていた。入り口を塞いでいるから「邪魔だな」と思いつつエントランスに入る。青い帽子の男性が伝票に走り書きをしているのを横目で見ながら自分の部屋のメールボックスを開けた時だった。


「あ、谷口さんですか、もしかして!」


 男性に声を掛けられて曖昧に頷く。見るからに宅配業者だが、一人暮らしなので男性に個人情報を伝えるのは勇気がいる。


「良かったです。北海道から荷物届いてますよ。めっちゃ大きいから、出来れば配達してしまいたいなーと思って帰りにもう一回寄ったんですわ。良かったわ-」

 関西人らしい人なつっこさでそう言うと、クシャリと伝票を握りつぶした。


「一気に運んでしまいたいんで、部屋のドア開けといて貰えますか」

「は、はあ」


 男性が急ぐように車にとって返したのを確認し、美葉も外階段を駆け上がり突き当たりの部屋の鍵を開けた。お父さんが何か荷物を送ってくれたのだろうか。そんな気の利くことをする人だったろうかと首を傾げていたら、大きな段ボールがずんずんと階段を昇ってきた。正確には男性が抱えて階段を上がっているのだが、段ボールが余りに大きいので男性の姿が見えず、箱だけがずんずんと昇ってきているように見えるのだ。


 一体誰が何を送ってきたのだろう?

 美葉の頭がはてなマークで一杯になる。

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