第3話 嫉妬の嵐

初めて二人っきりになる。

緊張して上手く会話できない。


「あ、あのさ……」

「ん?」

「どうして僕に話しかけたの?」

「なんでだろう? う~ん……、やっぱり興味があったからかな?」

「ふーん……」

「だって、山田君はいつも一人でいるじゃない。他の人たちとは違う雰囲気っていうか、なんていうのかなぁ。うまく説明出来ないや」


それはそうだ。

陽菜は知らないんだ。

僕がどんな人間なのか。


「君は友達がいないのか?」

「そういうわけでもないよ。みんな優しいし、お喋りもする。ただ……」


陽菜は少し寂しげに笑った。


「私はあんまり人と話すのが得意じゃなくて……。だから自分から積極的に行くことが出来ないの」

「へぇ……」


意外だと思った。

陽菜は社交的なタイプに見えるのに。


「君は、よく人に囲まれているじゃないか」

「あれは違うんだよ」


陽菜が苦笑いを浮かべる。


「最初はそうだったかもしれないけど、だんだん私のことを分かってくれるようになってくれただけなの。それで、いつの間にかあんな感じに」

「なるほど」

「ねぇ、山田君」

「なんだい?」

「今度、二人でどこか遊びに行きたいなぁ。ダメ?」

「えっ!?」


僕は驚いた。

まさか彼女から誘ってくるとは思わなかった。


「うわ、嬉しそうな顔。もしかして、私が言い出したことにビックリしているんじゃないでしょうね?」

「ち、違うよ!」


図星だ。僕は慌てて否定したが、明らかに動揺していたと思う。


「それじゃ、決まり!」

「あっ……ああああ……」

「やった!」


無邪気に喜ぶ陽菜。

勝手に話を進められる。


可愛い。

こんな子とデート出来るなんて信じられなかった。

僕は夢見心地で家に帰った。



次の日。

学校に行くと、僕を見る皆の視線が何だか冷たい。


(なんなんだ?)


首を傾げる僕。

教室に入ると、数人の男子が僕を取り囲んだ。


「おい、山田!」


リーダー格の男が僕の肩を乱暴に掴む。


「な、何だよ?」

「お前、木崎さんと付き合っているらしいな」


「えっ? そ、そんなことないよ。僕と彼女が釣り合う訳がない」

「うるせぇ!! 俺たちのアイドルに手を出しやがって!!」


僕は胸ぐらを掴み上げられ、壁に押し付けられた。

苦しい。息ができない。

僕は必死にもがいた。

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