第7話

 俺はもう一度氷の少女を見つめ直し、その顔を自分の記憶にある面影と重ね合わせた。


 ――助けて――

 かすかに声が聞こえてくるが、磁場の影響による耳鳴りかもしれない。

 ――ここから出して――

 幻聴にしてはしっかりと聞こえてくる、試しに問いかけてみようか。


「君は誰だ?」

 ――優里奈――

「ユリナ? やっぱり君はユリナなのか?」

 ――あなたは……――

「俺だ、タカシ!」

 ――隆志? でもおじさんに見えるけど――

「若い姿の君と別れて、三十年は経っているからね」

 ――ここはどこ? なぜ私はここにいるの?――

「木星の衛星エウロパだよ。君がいる理由はわからない」

 ――ここから出ることはできるの?――

「これから救出作戦を検討する」

 ――隆志もおじさんか、子供はいるの?――

「いや、海洋生物の研究に没頭していたら、いつの間にかここに来ていた」

 ――ここに海洋生物が?――

「この地下深くの海に無数の命が宿っている。俺はそれを君に見せたくて来たんだ」

 ――私に?――

「ああ、ほら見て」


 俺は携帯モニタに一枚の写真を映し出した、水族館で撮影したユリナの笑顔。


「絶対に君を救い出して、あの時の約束を……果たす」

 ――私はどうなってしまったの?――


「この世界からいなくなった……でも違った、君にもう一度出会うことができた。何かで繋がっていたんだ」

 ――宇宙船に乗って広い宇宙に旅立ちたいと思ってた。本当に実現できるなんて夢のよう――


「これが夢なのか、現実なのか、それを今から証明する。待っていてくれ」

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