第6話

 氷壁のすぐ横に防寒ユニットを組み立て、仮設の探査基地を構築した。

 分析用機材を運び込みユニット内に空気注入を行うと、俺達はヘルメットを外して息を吸い込む。


「ふう、これで準備完了。機材の電源を入れて、目標にセンサーを向けてくれ」


 傍らに設置したディスプレイを観察していると、まもなくして目標の分析画像が表示された。

「これは……まさしく人間だな。しかも生きている?」

 画面に表示された画像の中心に赤く灯る人体像がくっきりと浮かび上がった。


「極寒の氷の中で生命を維持しているとは、どういうことでしょう?」

「何か我々では理解できない防膜に覆われているのかもしれない。もしくはこの時空に存在しないものか」

「異空間?」

「そうだ、すでに航空宇宙局では超光速航法の研究が始まっている。人工的に亜空間の膜を造り出すことは理論的には可能だ」

「いづれにしても生きているなら、まずは助け出すべきでは?」

「そうだな彼女はどう見ても人間だ、人命救助を優先すべきだろう。車両に戻って、地球側に連絡してくる」


 タカダさんがヘルメットを被り防寒ユニットの外に出ていくと、一瞬凍りつくような風が舞い込んできた。

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