第5話
「優里奈さん、回診の時間です」看護師さんから声がかかった。
「優里奈ちゃん、調子はどうだい? 脈を測るから前を少し開けてくれるかな?」
「はい」パジャマのボタンを外すと、先生は私の胸元に聴診器を当てた。
「うん、大丈夫そうだね。予定通り手術は行えそうだ」
「高田先生……私怖いんです。心臓の手術って、うまくいくんですか?」
「ああ、心配しなくていい、人工弁に取り換えるだけだから。君は若いし体力もある」
「冷たい氷の中に閉ざされた夢を見るんです……私はここから抜け出すことができないんじゃないかって」
「手術が成功して順調に回復すれば、退院することはできる。今は体をゆっくり休めて体力をつけておいてね」
その夜、私は睡眠薬を飲むためにペットボトルを手に取った。
キャップをキュッと左に回し蓋を開けると、ペットボトルを口元に近づけ、ごくりと飲んでみる。隆志にもらった海洋深層水。無味乾燥、何の味もしない。今の私にはおいしさを感じとることができなかった。
やがて眠気に襲われ、深い眠りに就く。次第に落ちていく、暗い、暗い闇の向こう側。
そして見えてくる、いつもの
しばらくすると小さな光が見えてきた。私に向かって、一歩一歩近づいてくる。
――ああ、お願い! 私をここから出して。――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます