第4話

「航空宇宙局からの報告では映像だけではハッキリしたことは言えないらしいが、明らかに生命体の痕跡であることは間違いないだろうと」


「タカダさん、まさか彼女生きてないですよね?」

「それはないだろうな……しかしどうだろう、地球の常識で考えればそうだが、エウロパの環境に適した生命体がいても、おかしくない」


「サーモセンサーとCTスキャナーで調査してみますか?」

「可能性は低いがエウロパの生態調査が目的だからな。一度分析してみるか」


 探査基地から10キロメートル離れた調査地点に向かう、大型雪上ジープのチタン製タイヤの氷を砕く音が車内でこだまする。


「タカダさん、こういうこと言うと変に思われるかもしれないですが、あの少女知っている気がするんです」

「……昔の彼女に似てるとか?」

「いや幼馴染に」

「どうせ振られたんだろう? こんな寂れたところに男一人で来たら感傷的にもなるよな。俺にも苦い思い出はあるからわかるよ、俺は別れた女房が頭に浮かんだけどな」


「この宇宙はどうなっているんでしょう? こんな奇跡的な事が現実にあるのでしょうか」

「たしかに物理原則に反した事象だな、ひょっとしたらこの宇宙は空想の中にあるのかもな」冗談半分にタカダさんは呟いた。


「誰かの創造そうぞうした世界……」

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