第3話

「もう来ないでって言ったはずよ? 何しに来たの」

「冷たいな、もちろんお見舞いだよ。幼馴染として、それくらいの事はしてもいいだろう?」


「私に会いに来ても何もできないから、隆志は自分のやりたい事をやればいいよ。今しかできない事がたくさんあると思う」

「俺のやりたい事かあ、海が好きだからサーフィンをするか、海洋生物の本を読むくらいだもんな」


「私には何もない。ただ長い時間、何も考えず眠るだけ……嫌なことばかり言っちゃう、だからそばにいてほしくない」

「前にも話したけど、俺の夢は深海探査艇に乗って未知の生物を探索すること。優里奈はその話をすごい楽しそうに聞いてくれたよね。海洋生物のうち、91%はまだ発見されていないって言ったら、見てみたい! って」


「あの時は本当にそう思ってた。その後色々調べたりして、海の神秘に触れたような気がしてた。でも今は興味もないし、隆志の夢が逆にねたまましく思う。だから近づかないでほしい」


「……その涙は俺のことがすごい嫌いだから?」

「涙? これはただ悔しいだけ、何もできない自分が……辛い」

「俺は待っているよ。君が元気になって、また一緒に水族館に行ける日が来ることを。あ、これお見舞い! 食べ物はだめかもしれないけど、水ならいいよね?」テーブルの上に数本のペットボトルが置かれた。


「水?」

「そう、深さ4000メートルの海洋深層水。ミネラルを多く含んでいて体にいいんだ。これ飲めば、きっと元気になるよ」

「ありがとう、でももう来なくていい。私が苦しくなる」


「わかった……次に会う時は退院後だね。待ってるよ」


 優しい声をかけてくれる隆志を見つめながら、私は不安を感じていた。


 ――そんな日が本当に来るの?――

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