4-2
来栖たちの前に現れた碓井隊の社用車は、気味の悪い黒と赤のマーブル模様になっていた。よく見れば血やら肉片やらが貼りついているかと思えば、どろどろになった澱や黒い羽が貼りついている。
「やあやあ、お待たせ」
そう言って降り立った波羅はさっさと来栖隊の社用車に乗り換えた。佐藤もそれに続く。
「話は中で。すぐに出ましょう」
碓井は来栖たちの前に立つとそれだけ言って、同じように車に乗り込んだ。
すぐさま発進した社用車の中。一番に口を開いたのは櫟原だった。
「車どうしちゃったんすか? なんであんなどろどろ?」
「烏の大群が突っ込んできたんよ」
「烏の大群に突っ込んでいったのさ」
佐藤と波羅が口を開いたのは同時だった。
大量の烏を轢き殺しながら無理矢理押し進む社用車を想像した。驚愕しながら「よく事故りませんでしたね……」と感嘆の声を漏らす。
「……情報の共有を」
ハンドルを握る来栖が言った。それを皮切りに碓井の説明とこれからの任務内容の確認が行われる。
第一に天鬼の救出が最優先。それと並行して問題の解決。もしくは緩和措置。
「現状、ターゲットが何者なのかはわかってないんすよね?」
「まったくもって不明。おそらく祠の祭神が関係してるとは思うんだけどね」
「……烏の関係性は」
「現段階で確定要素はありません」
各自認識のすり合わせも兼ねて質問を飛ばし合う。
舗装された道から外れたのか社内が激しく揺れだした。青々とした藪を通り抜け、轍を進む。木々が生い茂り、まるで行く手を阻んでいるかのようだった。枝垂れた葉先が車体を撫でていく。もう行く先なんてないのではないだろうかと思った矢先、一気に視界が開けた場所に出た。
「なにこれ……」
止まった車内から外を見て、ぽつり。佐藤がつぶやいた。
あたり一面、すべてが真っ黒に塗りつぶされていた。車内は沈黙に包まれた。
そして、それが敷き詰められるようにしながら、こちらを見る大量の烏だと認識するよりも早く櫟原が口を開いた。
「最後に聞きたいんすけど、なんで烏は氏神やら人間やらを食べるんすか?」
ぎゅっとハンドルを握りなおす来栖。それぞれが獲物を指先で触り確認する。そして、数珠を備えた波羅が「そりゃあ……」と、口を開く。
「力を付けるためさ」
アクセルをベタ踏みする来栖。吠えるようなエンジン音をさせ急発進する車。飛び上がる烏の大群。
泥の中を滑りながら進む車は中央に停車する。一気に飛び出した面々は襲い掛かる烏に立ち向かう。
「ここはぼくたちに任せてください! 来栖さんたちは煉獄へ!」
抜刀しながら叫ぶ碓井。ひとつ頷いた来栖は櫟原とそのまま森の奥へ駆け抜けていった。
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