第3話 なんでここに。


「古橋さん、もうすぐ着きますよ!」


階段を昇って部室へと向かう。

美島先輩についていくと、意外にもすぐに部室に着いた。


「着きましたよ!ここが天文サークルです!ささ、入ってください」


美島先輩はそう言うと、ドアを開けてくれた。


一体どんな人が天文サークルにはいるのだろうか……


少し緊張してしまうが、俺は深呼吸をして部室の中に入る。


中に入ると部室には、長机の一番奥で下を向いてパソコンをいじっている男性しかいなかった。

男性は俺には気づいていない様子で、美島先輩に話しかけた。


「二年連続誰も来ないのは流石にまずく……って…お!君はまさか……!?」


男性は美島先輩と話そうと顔を上げると、俺の存在に気付いたようで驚いた顔をしていた。


……って、いや、そんなことより…

今ふと聞こえちゃったけど。


ここのサークルってもしかして……


人が全然いない感じ!?


最悪のケース、美島先輩とこの男性の二人しかこのサークルにいない可能性も……

あはは、まっ、まさかな、まさかそんなわけ……


俺がそんなことを考えていると、美島先輩が部室に入って状況を説明してくれた。


「ふふふ、彼はね!わが天文サークルの新入部員だよ!」


美島先輩が勝ち誇った感じでVサインを男性に向かってする。

それを見て男性も椅子から立ち上がり俺に近づいてきた。


「それはでかした優香!キミ、よく来てくれたね!歓迎するよ!僕はここの代表をやっている理工学部3年の佐々木光汰。キミの名前は?」


佐々木先輩は、俺に握手を求めるように右手をすっと差し出してきた。

俺は慣れないながらも握手に応じて軽く自己紹介をする。


「はじめまして、僕は古橋柊夜っていいます。よろしくお願いします」


「古橋さんって言うんだね。これからよろしく!」


佐々木先輩はそう言って握手をし終えると、すぐに自分の元いた場所に戻った。

そして、右手で俺にドアに一番近い椅子に座るよう促す。


「古橋さん、ぜひそこの椅子に座ってくれ」


佐々木先輩に言われ俺が座ると、美島先輩が長机の一番奥まで行ってしまった。

なんか、これだとまるで今から面接するみたいだな……


なんてくだらないことを思っていると、佐々木先輩が一枚のでかい紙を渡してきた。


「部活の軽い紹介は多分優香から紙でもらったと思うから、一応活動内容諸々を詳細に書いたこれも渡しておくね」


紙を見ると、サークルの人数や具体的な活動日などが書いてあった。


俺はとりあえず、ずっと気になっていたサークルの人数を確認する。


えっと、サークルの人数は……


ふっ、二人!?


えっ、嘘でしょ、本気で言ってるのか……

同学年の人誰もこのサークル入ってないの?本当に!?


俺がサークルの人数に驚いていると、佐々木先輩がスマホを差し出してきた。


「これがこのサークルのグループラ〇ンだから、入ってね」


いや、二人しかいないのに律儀にグループラ〇ン作ってんのかよ。

って、そんなことツッコんでる場合じゃなくて……


えっ、俺サークル入るの撤回していいかな……

流石に同学年の人誰もいないサークルは嫌なんだけど……


そう思い俺は先輩二人の顔色を窺うが、二人は新入部員という存在が嬉しいらしく笑顔で互いを褒め讃え合っていた。


ヤバい、今更前言撤回できる雰囲気じゃないじゃん……


もうこのサークル入るしかないのか……


まぁ、先輩二人はいい人そうだしちゃんとサークル入るか。


俺は諦めて、グループに入るために自分のスマホを操作する。

すると、俺の後ろにあるドアからノックをする音が聞こえてきた。


先輩二人は、また驚いた様子で佐々木先輩が「はい、なんでしょうか?」と言った。


きっと大学の教授とかそんな感じの人が来ただけだろう。

と思い、俺は後ろを振り向かずに作業を続ける。


ノックをした人は、佐々木先輩の質問に対してドアを開けながら「失礼します」と言ってドアを開けて中に入ってきた。


って、あれ?この声どこかで聞いたことあったような……


俺は誰の声か知りたくて後ろを振り向く。


すると、そこには……


おい、嘘だろ……?

な、なんでここに……


そこには、元カノである桐谷葉月らしき女の人が立っていた。

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