第102話 特訓!!!②


「特訓はもう終わり?」

「いえ、まだです!」


 私の特訓を見学しているアルフレート先輩が、こうやってちょくちょく特訓の合間に話しかけてくる。

 

 別に頻繁に邪魔をしてくるわけではないので、邪魔ではないのだけれど…。


 単に私が落ち着かないだけだ。

 当の本人もしつこく口を出すわけでもなく、退屈している訳でもなく、不思議と楽しそうに見学をしている。


(ほんと、調子狂うなぁ…)


 でもなんていうか、私もまだ昨日のビックリを引きずっているのか、あの食えない笑顔にドキドキしてしまう。

 何もしていなくてもキラキラしているなんて乙女ゲーパッケージセンターの実力ってホント反則的にずるいと思う。


 え、ダンスはどうしたのかって?

 そりゃもう引き受けましたよ、断れないですし?おすし?

 いやいや、我ながらものすごくものすごーーくビックリしたけれど、『誰かと一回は踊らないと王子として角が立つから』なんて理由を伝えられたらね。


 断れないよね、立場的にも。

 貴族の身分的にもそうだし、生徒会の後輩だし。


 あ、そうなの、そうでしたわ、なるほどね! ってね!


 そもそも星祭りのダンスはパートナー固定じゃなくて、次々パートナーを変えていくタイプのダンスだし、お誘いだって最初の最初に組んで輪の中に入っていくだけのことだもの。

 お兄様の甘酸っぱいお話を聞いてすぐだったから無駄に焦ってしまったよね。


 ホントびっくりしたね!


 でも確かにアルフレート先輩だって誰かと踊らないといけないよね。

 当たり前だけど女子と。


 キャロル先輩ともナターリア先輩とも踊らないなら必然的に誰か他の人がパートナーを務めることになるわけだし。


 同じ生徒会メンバーでもナターリア先輩にはユージン先輩がいるし。

 そういやゲームでも対象にならなかった攻略者たちが誰とダンスをしているとかの明記は無かったけどそんなことあえて書く必要もないからね。

 無駄にプレーヤーを不快にしちゃうもんね。


 落ち着いて考えてみたら納得の配役。

 私が繰り上がって来たのもそれなら納得できる。


 なんせわたくし、ネーミング有りのキャラですし。

 モブより格上ですし。


 ちょうど通りがかったモブAとモブBが『その手があったか!』みたいな顔して通り過ぎて行ったけど、そうだよ、その手があったんだよ! 


 王子様流石だよ! 最速で安牌選んでいったよ! 

 年頃の男子にとって全く交流のない同級生より『同級生(ジーク)の妹』の方が誘いやすいよね。


 ああ、でも本当びっくりしちゃった!

 ここが乙女ゲームの世界だってあらためて思い出しちゃいました!



「そうだ、ならちょっとバリエーションある感じで殴ってもらってもいいでしょうか」


 上からゴン!って感じではなく、なんか違う素早い動き。

 実際の野生動物ってどんな動きをするか分からないって言うし、ちょっと違った風も体験してみたい。

 ひとまずアルフレート先輩のことは置いておいて特訓しましょう、特訓!


 先ほどの成果に調子に乗った私はさらにワンランク上の攻防を希望した。

 


「そういうことなら協力しよう」


 背後から声が掛かり、突如魔力障壁の背面に衝撃が走った。


「わっ!」


 え? え? なに? 今の声アメリアさん? 

 

 魔力障壁を維持したまま後方を振り返ると既にそこに彼女の姿はなく、続いて上部からの攻撃。


 あれ? 今上から攻撃された???


 視線を上に向けたときにはすでに影も形もない。

 声の主であるアメリアさんは既にゴーレムの肩の上にいた。


「ふむ、固いな」


 アメリアさんが感心したように、私の魔力障壁を眺めている。


「びっ…」


 び、っくりした~~~!! 速っい!

 何をされたかぜんぜん分からなかった! ものすごく速い!!


「特訓をしているのだろう? ならば見ていない方向からの攻撃にも備ええた方がいいかと思った。お節介だったか?」


 そう言ってアメリアさんは笑う。


 とっ、突然の攻撃に驚いたことはもちろんだけど、それよりっ!

 アメリアさんめっちゃかっこいいんですけど!? なにその動き、忍者!? いや、西洋の超絶美人だからオスカル様みたい(違う)


「いえいえ、全然! アメリアさんも特訓に協力してくれるのですか?」

「ああ、いいぞ」


 超個人的な特訓なのに、助っ人してくれるアメリアさん、何て良い人!

 


「アメリア嬢、足元を狙ってみろ」


 突然の指示にアメリアさんは矢のように飛び出し、地面すれすれに回し蹴りを叩き込んできた。


「ひえっ!」


 綺麗な球体を維持していた魔力障壁が軸をぶらされた途端に卵の殻のように砕けて消える。


「あわわ…」


 レベル7のゴーレム君のゲンコツにも耐えた私の魔力障壁があっさりと破られてしまった。


 ええええ嘘でしょう。ちょっとくやしい。


 超人的スピードで繰り出された蹴り。

 …目の前の出来事だったので今度は見えました。


「魔力の分配が甘い。完全な球体って言っただろう?」


 声の元を見ればそこにはイジワルな笑みを浮かべたユージン先輩。

 あれ、いつの間にいらっしゃってたんですか、と思ったけれどここは農場の脇の空き地なので農園担当のユージン先輩は常に近くにいらっしゃいましたね。


 実はユージン先輩が私にこの魔法を教えてくれた師匠なので、時々ふらっとこうしてアドバイスをくれたりするのです。


「丸くなっていませんでしたか? ちゃんと球体でしたよ??」


 割れちゃったから確認する術はないけれど、ちゃんとシャボン玉みたいに丸かったはず。


「足下、地面にも食い込ませる感覚で作らないとだめだ。イメージが甘い」

「あー…」


 なるほど。

 そういえば無意識に球体は地面まで、と思っていたので、私の魔力障壁は風鈴みたいな形だったのかも。

 さすがにアメリアさんの蹴りがゴーレムのパンチより強いはずはないよね、私の魔力障壁の弱点がそこだったんだわ。


「地面の中まで…」


 土の中まで入りこんだ球をイメージして再度魔力を展開させる。


(こうかな…?)


 そう、イメージ的にはガチャガチャのカプセルトイのような球体。

 地面に魔力を浸透させるのは、土を削って行くのかと思いきや思いの外するすると魔力は浸透していった。


 水みたい。

 うん、これならできそう。


「綺麗な球体ができたら硬質化と反射の指向性を加える」

「はい」


 続くユージン先輩のアドバイス通りに魔力障壁に目的を持たせたところ、魔力障壁がぐっと土を噛んで固定された感じがした。


「おおお…」


 なるほどこれは頑丈そう、これならモン〇ンのドス○ァンゴが突進してきても耐えられるかも。


「あとは魔力に反発ではなく受け流す指向性をつけたり、狙った場所に跳ね返したりすることもできる。ロゼッタ嬢ならば、属性を水に変えて火を消したりもできるだろう。いろんな状況に備えて対応を変えることだ」


 後はそれが素早くできるように反復練習だな、と師匠はおっしゃった。


 なるほどなるほど、さすがユージン師匠、教えるのが上手くて大変助かります!! 私の魔力障壁のダメなところも一瞬で見抜かれちゃったし、魔法に関しては本当に信用できる人だわ、さすがメガネ枠!


「はい! ありがとうございます!」


 私の元気なお返事を持ってユージン先輩の指導は終了した。






 ****





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