第99話 星のデザート


 小さな小鉢によそわれたゼリーをぺろりと完食した。

 学園よりは涼しいとはいえ、精霊の森もやっぱり暑いし、涼やかなスイーツは嬉しい! 喉ごしもスッキリ。味は見た目の通りソーダ味っぽい、黄色のゼリーはみかん味かなあ。


「やっぱりカットして出すより、こうやってバットから大きな匙ですくって取った方がわくわくしますね」

「そうですわね、一人分の分量が定められている訳ではないですし、見た目も大きな方が楽しいですね」

「でも一人分の量を決めていないとどれくらい必要か読めないですね」

「このバット、あといくつぐらいあったかな…数を確認してこよう」


 お兄様も含め皆さんは試食をしながらも盛りつけの方法など、今後のことまで話し合っている。偉い。毎日こうして空いた時間に次のメニューを考えたりしているのよね。ほんと頭が下がります。


 …というかぶっちゃけ炊事チームはどこのチームより仲良くなっているような気がする。

 持ち込まれる食材も毎日違うので食事のメニューを決めるのも大変だし、毎日忙しくて濃密な時間を過ごしているせいか、お兄様もここではあまり浮き足立ってない。キャロル先輩とも普通に話せている。

 やっぱり自分の得意な分野だと伸び伸びと会話ができるよね?


 というか、ついこの間から思えば大進歩じゃない???

 二人の距離もずっと縮まってるんじゃないかな、どうだろうか!


「ん! このクッキーお兄様が作りました?」


 星形のクッキーを一口かじってピンときた。


「お、分かったか。ロゼッタは鋭いな」


 お兄様を見ればはにかみつつ誇らしげに笑っている。


 あー! 私の推しが とても 尊い!!!

 テーブルをどかどかと叩きたい衝動を抑え、ぎりぎりと拳を握る。


 そりゃもちろん分かりますよう! 

 お兄様のクッキーの味はバッチリ覚えているもの! バターたっぷりでサックサクのクッキー大好き!! こんなキャンプ先で食べられるとは思ってなかったですけれど!


「もちろん分かりますわ! だってわたくし、お兄様のお菓子のファンですもの!」


 声を大にして自信満々に答える。

 お菓子じゃなくて人間性とかも全部ひっくるめて大大大好きの大ファンだけれどね!!!


 推しの成長が著しくて泣ける。

 料理の腕前を隠していたこ頃とは大違い。


 イオリス兄妹の毎度のコミュニケーションにも慣れたのか先輩方は温かい眼差しで見守ってくれている。うむ! 何事も積み重ねよね!


「ロゼッタちゃん、よかったらこちらもどうぞ」


 差し出された小皿には切り分けたばかりのパウンドケーキ。型から外したばかりなのか、まだほんのりと温かい。


「え! すごい、こちらも食べていいんですの!?」

「もちろんですわ、ぜひ食べてみて」


 ゼリーにクッキー、パインドケーキ。

 次々と出されるお菓子に完全に餌付けされている私。お姉さまたち皆さん優しくて大好きです!


「すごいです! こんな星形の模様が入ったケーキ初めて見ました!そして美味しいです!」

「ありがとう!よかった!」


 絶賛する私の言葉に、制作者であろう先輩がほっと胸をなで下ろしている。いや、ほんと何食べてもおいしいです。


 しかもなんだこれ、見た目もすごく可愛い! 

 白地の生地にオレンジ?の星形がinされたパウンドケーキ。


 え? こんなことできるの?? このオレンジの生地はキャロットケーキかな?? 


 見た目からしてわくわくとトキメキが止まらない。スマホがあったら全部写真に撮りたいところだ。


「なるほど、確かにこの方法なら星を入れられるね」

「でもたくさん作るにはちょっと手間がかかりすぎますね」

「端切れが出過ぎるのもちょっと効率が悪いかも…」

「確かに。たった一つ作れればいいわけではないからなぁ…」


 食べてはその美味しさに感動するだけの私と違って、お兄様や皆さんは試食しながらあれこれと話し合っている。そうだよね、作る側からすると量産できるかどうかとか手間とかも大事だよね。


 なんていうか、もはやここ、お料理研究会じゃん!


 貴族の子息・子女と侮るなかれ、趣味を極めた人間が集まればもうそれは専門職。

 お兄様、学園に戻ったらキャロル先輩の所属している調理部に入ったらいいんじゃないかしら。

 原作では趣味のお菓子作りを隠していたみたいだけれど、もう普通に皆にもばれてるし問題ないよね。


(…あ、)


 唐突に閃いた。

 ゲームでお兄様は明後日の星祭りの直前に(大猪との対峙と共に)ヒロインにお誘いの声を掛けるのだけれども、別に今でもいいのでは?


 むしろ、今がいいのでは!?


 普通に和気あいあいとレシピについて話し合うお兄様とキャロル先輩を盗み見る。


(うん、仲は…悪くないと思う)


 恋愛のメーターは見えないけれど、この合宿で同じチームになって親密度も上がっているはずだし…上がってるよね??


 ゲームのシナリオがそうだったからって、その通りにする必要はないじゃない。

 そんな当たり前の事に今更気が付いた。


 そもそも私がやろうとしていることは『どうにかこうにか恋愛ルートと同じ状況にしてゲームシステムにお兄様ルートであると誤認させる』ことなのだから、ゲームから逸脱するのはむしろ理にかなっている。


 それに、キャロル先輩は優しいから先にお兄様と約束を取り付けてしまえば可能性が上がるのでは??


 先んずれば人を制す! これだ!





 ****



 本作を面白いな、続きを読みたいな、と

 思ってくださった方はぜひ、目次の下にある広告の下の★★★で評価をお願いします!

 執筆の励みにさせていただきます!


 ブクマも評価もたくさん増えるといいな~☆ 

 よろしくお願いします╰(*´︶`*)╯

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る