第93話 夜ミーティングとおせっかい
「まずは皆さん、お疲れ様でした」
アレク先生のその言葉で、夜の生徒会ミーティングは始まった。
「毎年二日目の午後が一番大変なので、今年も大きな問題なく無事に乗り越えることができてよかったです」
そう言ってアレク先生は椅子に腰を下ろして深々と息を吐いた。
ぐったりとしているその様子に本日の激務に思いを馳せる。
先生、お疲れ様でした。
午後はほぼ休む暇もありませんでしたね。
ここは宿舎1階の多目的ホール。
私たちは丸椅子を円座にして簡易的なミーティングを行っています。
参加メンバーは生徒会メンバーのアルフレート先輩を筆頭に、ユージン先輩、ロイド先輩、ナターリア先輩と私。お手伝いメンバーのシルヴィ君とアメリアさん、そして今一番お疲れのアレク先生。
一目見て疲労困憊しているアレク先生はさておき、ナターリア先輩も少しだけ元気がない。やはりバーナード所長の『特別授業』が効いているのだろう。
「えーと、では1年生も2年生もみんなとびきり刺激的な毎日を送っているかと思うけれど、何か計画には無いトラブルとか、報告・相談したいことはあるかな?」
お久しぶりの生徒会長、アルフレート先輩が皆の発言を促した。
基本的にこの『夏の課外授業』は毎年行っている行事なので事前にきっちりと手順がまとめられているでそれほどスケジュールが狂うことはない。精霊の森に来てからのミーティングは実はこれが初めてだった。
「今のところ、特に際立ってた予定変更などは無いが…、俺は特に1年のシルヴィ君のゴーレム操術に注目した。ゴーレムは本当に便利だな」
ユージン先輩が今回一番の功労者、シルヴィ君を褒める。
「確かに。初日から大活躍だったね」
アルフレート先輩もそれに頷き、全員がそれに同意した。
そうそう! それは本当にそう。
シルヴィ君がいなかったら私たちもアレク先生ばりに疲労困憊していたかもしれない。
「ありがとうございます」
皆から注目されたシルヴィ君は少し照れた様子でぺこりと頭を下げた。
「シルヴィ君は本当に凄いですよね~!」
私もこの流れに乗っかって彼を大いに褒める。
もちろんゲームの恋愛攻略対象者の一人であり、将来確実に完璧なスーパーイケメンになるシルヴィ君の事をあらためて私が自慢するのはおこがましいのだけれども、仲良しのお友達が評価されるのは純粋にうれしい。
「あれはどの程度同時に動かせるものなんだ?」
「ええと…限界まで試したことは無いし、サイズによって違うけれど、20体ぐらいまでなら問題なく同時に動かせます」
「そうか、それは凄いな」
あの口数の少ないロイド先輩ですら感嘆の言葉を口にしている。
「去年は本当に大変だったから…」
アルフレート先輩が昨年を思い出して苦笑いすると、同じく参加していたユージン先輩、ロイド先輩も揃って微妙な顔をした。
「そうだったな」
「単純に人手不足だった」
去年は私たちと同じ様にお手伝いの1年生メンバーとして参加したであろうこのお三方もあの死屍累々とした現場を奔走したのだと思うとなんだか可笑しい。
「ナターリア先輩は大丈夫ですか?」
しょんぼりとしている様子のナターリア先輩に声を掛けた。
昨年は参加していなかったので、何もかも初めてだったナターリア先輩はいろいろと衝撃な日々だっただろう。
「…ええ、ちょっとびっくりしてしまったけれど、大丈夫ですわ」
私たちはアレク先生に『おまじない』を掛けてもらっているからいろいろ大丈夫だったけれどもナターリア先輩は普通にしんどかったはずだ。
「ナターリア嬢も無理をしなくていいからね、本当に。生徒会役員だからと気負い過ぎず具合が悪くなったら休んでいいから」
「はい。ありがとうございます」
ナターリア先輩はそう言うけれども、きっと無理しちゃうんだろうなあ…と思う。
気丈で責任感の強い彼女は初日から女子生徒のまとめ役をかっている。はた目からでもほかの女子生徒に頼られていているのが分かるもの。
「……」
気遣う言葉をかけるアフルレート先輩と無言のユージン先輩。
(……む、)
ちょっと、そこはユージン先輩も何か声を掛けるべきなんじゃないの?
無理するな、とかお前は頑張っている、とかそんなやつ。
でも、ちょっとだけ…お節介の虫がむくむくと湧いた。
ナターリア先輩とユージン先輩、ちゃんと恋愛ルートを進めているんだろうか。
あのユージン先輩の鉄面皮の中にいろんな感情が籠っているのはもちろんこのゲームのユーザーだから『私は』知っているけれど、ぱっと見た限りでは全然分からない。
大鍋事件からこちらキャロル先輩とお兄様の方に掛かりっきりでナターリア先輩とユージン先輩の方はろくに追いかけてはいなかった。
ナターリア先輩はとにかく美人で優しくて頑張り屋さんで、常に最高最強の先輩なのでまさか恋に破れることがあるかもしれないなんて微塵に思ったこともなかったけれど、まさかまさかの状態だった…なんてことある?
(うーん…)
…でもナターリア先輩だって5日目の星祭りでユージン先輩から誘われないと恋愛ルートには入れないんだものね。
私はお兄様の恋を応援するだけで手いっぱいだから二人の恋路は遠巻きに見守るだけだったけれど、純粋に応援はしているのだ。
機会があれば、ちょっとだけ。
後押しするくらいならやってあげてもいいかな。
だって誰にとっても一生で一度の夏なんだもの。
できることなら全部やったらいいじゃない?
もちろんお兄様が最優先だけれども!
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