第72話 才能には才能で


「実は秘密にしていたのですが…」


 素直に白状しました。

 いやもう、何を言ってももう上手にごまかせる気がしないし、シルヴィ君にならいいかな、って。


 人のステータスが見えるのは秘密にして、物の数値が見えることだけを暴露。嘘と真実を混ぜて話すのがいいって誰かが言ってたし。


 なにせ私は嘘が下手だからね! 

 それにこの間の件でそのうちバレそうな予感がしないでもない。

 先日ミラージュ様にも『目がいい』って言われたし『物の目利き』ができる程度にしておけばギリ気味悪がられずにいけるんじゃないかな~なんて。


「なるほどね」


 私の説明を聞いてシルヴィ君はふむふむと頷いている。私の今までの行動の違和感なんかに彼なりの決着をつけているんだろう。というか、シルヴィ君にはわりと初対面の時から疑問を持たれていたかもしれない。


 シルヴィ君は見た目は子供でも頭脳は大人だもんね。今までは見逃してくれていただけだったのかも。

 …うっかりそのキャッチで某名探偵を思い出したけれど、でもあの『見た目は子供!頭脳は大人!』っていやつ、18歳も子供では?とか思ってしまっちゃった。悲しいかな中身アラサーの私。

 むしろそのキャッチは私の方がガッチリ決まってないかなもしかして。見た目は子供! 頭脳は普通のアラサー!って感じで…でも特殊技能はありません、少々図太くなっただけです。


 …なんか自分で言ってて凹んできた。やめよう。


 あとこのタイミングでシルヴィ君に秘密をバラすのは、正直良いアイテムが欲しいからです。私のこの能力と秘密を提供するので、何か良いアイテム譲ってください!…っていう。

 どこまでも打算的な私、転んでもただでは起きない精神は今も健在!


「じゃあさ、ちょっとやってほしい事があるんだけどいいかな?」

「はい?」


 そう言ってシルヴィくんは隣の部屋から大きな平たい箱を持ってきた。

 平たい箱の中は5センチ四方に仕切りがあり、さまざまなサイズの魔石が納められている。


「実はね、この魔石、ついこの間うっかりひっくり返してしまったんだけど、仕分けなおせる?」


 なるほど、確かにこれなら口で説明するより確実。論より証拠だ。


「もちろん、おまかせください!」


 よしきた! こういうのなら私にもできる!

 箱に収められた魔石は火の属性、水の属性、小さいものから大きいもの、質の良いもの悪いもの。左から右へと順に高価なものになっている。


「慌ててテキトーに戻したから、けっこう混ざってしまっているでしょう?」

「うんうん、たしかに」


 おおまかに揃ってはいるものの、間仕切りで区切られた区画内に仲間外れの物がいくつか入っている。指でつんつんと突つきながら、私はそれらをぽいぽいと箱の外に出し、正しい場所へと戻していった。

 時間はかかるけれど、触ればわかる。


 魔法は魔道具の要と言ってもいい大事な石だ。

 魔法の使えない一般人でもこの石を使った魔道具ならば、魔法を使うのと同じ効果を簡単に得られる。もちろんお値段もそこそこするけれども。

 ひとまず目に付くものは揃えてみた。


「ふうん、どうやら本当みたいだ」

「うん?」

「実はね、僕も魔力が視えるんだよ」

「え!」


 そうだったのか! 私だけの異能力って訳じゃなかったんだね。

 考えてみればこの世界にだって型にはまらない能力というものがあって当然なのだ。


「ロゼッタみたいに数値で見えるのとは違って、僕のは色と輝きの強さなんかが分かるんだけれど、数値で見えるのは便利でいいね」

「色!? むしろ色ってどんな風に見えるんです??」

「そうだね、例えば今、君が持っている魔石は火の魔石だよね、それはぼんやりと赤く輝いて見えるよ」

「へえ~! そうなんですね!では、属性を揃えたりするのは便利なんじゃ?」

「うん、そうだね」


 手にした石を見てみる。

 魔石 火の属性+1 なるほど合っている。


「でもこういうのは逆に難しいかも」


 そう言ってシルヴィ君が取り出したのは箱の中の魔石より一回り大きな魔石だった。

 風属性+1、水属性+1、土属性+2 なるほど!


「属性が三つありますわ!」

「そうそう。こうなると色が混ざるというか、丸きり分からないではないけれど、輝きが強くなって結果白くなっちゃうんだ」


 なるほどなるほどー、でも私の力はいちいち手に取らないといけないし、シルヴィ君の力は距離があっても見ただけで分かるんじゃない? 能力にも一長一短あるんだね。


「そうだ、じゃあロゼッタが自分で作ってみたらどう?」

「はい??????」

「君のその能力、アイテム制作にすごく向いてると思うな」

「わたくし、不器用なのですが!?」

「ボクも手伝うから、君もボクを手伝ってよ」

「わたくしがシルヴィ君を手伝うのはかまいませんけれど、わたくしが自分で何かを作るのは難しいのじゃないかしら!?」


 とても不器用なんですけど!!?(2回目)

 シルヴィ君のお店で売っているアクセサリーみたいな状態にできる気がしない。あとセンスがない!!! このあいだ花冠が精々です。


「試しにやってみようよ、教えるから」


 そう言ってシルヴィ君はニコニコと材料を並べていく。針金にペンチ、ニッパー…あとなんだかよく分からない器具の数々。


「いえいえ、無理ですって」

「そんなことないよ、ロゼッタは土の属性を持っているでしょう?」

「ありますけれど…」

「魔石はね、石を扱うから土属性を持っていると上手に扱えるんだよ? この間紹介してくれたクリス先輩とかも得意でしょ?」


 クリス先輩??? あ、モブBのことか。名前忘れてた。

 あー、そういえばモブBも土属性が得意って言ってたっけ。魔道具作りに向いているのか~なるほどな。


「一個分の材料はあげるよ」

「やります!!!!」


 突然手のひらを返す私。だって材料も高いのよ!?!?!?

 しかもシルヴィ君のアドバイス付きならこれはやらなきゃ損!


 ということで、予定外だったけれどチャレンジすることになりました。

 …自分でアイテム作れたらたしかにとても有利、ではある。


 できるかどうかは別にしてね!




 ****




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