第64話 新たなライバル
「君たちはこの後学園へ戻るんだろう?」
「はい。えっと夕食をいただいてからになりますけれど」
「君たちは私の命の恩人だからね、今度きちんとお礼をさせてもらえないだろうか」
そう言って私たち二人へと頭を下げるミラージュ様に私は慌てて断りを入れた。
「わたくしはほとんど何もしていませんでしたので、お礼はキャロル先輩へどうぞ」
ミラージュ様の命を救ったのは9割がたキャロル先輩で、私は最後にちょっとだけお助けしただけだ。それに自分の不甲斐なさと実力不足思い知って凹んだばかりなので恐れ多い。
「またまた」
「ロゼッタちゃんが機転を利かせてくれたおかげじゃない」
そう言って二人はにこにこと笑う。
えっと、本当にいたたまれないので止めてほしいそのノリ。
あれ、でもなんだかこの二人ってちょっと似てる? ニコニコ光属性?(あ!! 本当に二人とも聖属性持ちだ!!)回復魔法が使える人って聖属性持ちの人が多いことは知識としてあったけど、それとはまた別に唐突に納得してしまった。
「いえあの、本当に…お礼とかいらないんで」
実力不足で心身ともに捻じれそうになるので謙遜とかじゃなく、本当に大丈夫です。
「でも私もそうです。元気になってくれただけでうれしいのでお言葉だけで十分です」
キャロル先輩も同じように遠慮する。
…いや、キャロル先輩はお礼されてもいいと思うけれどもひとまず余計なことは言うまい。
「ふむ、そうか…。でもそれでは私の気がすまないので何か別の方法を考えてみよう。私で何か協力できることがあれば遠慮なく言ってくれ」
「あ、はい」
「そういうことなら、ありがとうございます」
貸し一つ、ってことだよね。
そういうことならいいかな。今後、イーズデイル家関連で何かしらの動きがあった場合に協力してもらう事とかもあるかもしれないしね。
(………)
でも万が一、キャロル先輩とロイド先輩が結婚したらこの方がキャロル先輩のお義兄様になるんだわ…などど、未来を想像してみた。
待って、いろいろ強すぎない???
え、ちょっとパワーバランスおかしくない? いやいや、キャロル先輩にはお兄様がいますし、まだ全然諦めてないですから。
一軍チーム強すぎる。正直ずるい。
「百面相してるね」
そう言ってミラージュ様が笑う。
しまった、また顔に出ちゃってた。とことんまで腹にためておけない私よ、さっき反省したばかりでしょ!
「いいなあ、妹かわいいなあ」
「え」
あれ、今私が褒められた?
「うちは男ばかりの兄弟だから、妹とか憧れるんだよね」
「分かります! 私も一人っ子なので妹が欲しかったんです!」
ミラージュ様の言葉にキャロル先輩が全力で同意した。
おおう、さすが全プレイヤーを魅了した【妹キャラロゼッタ】、こういう所で好意的に受け入れられる存在なのね、ありがたいな?
突然自分の価値に気づいてしまった。
あー、もしかしたらロゼッタにはこういうキャラ補正はあるのかもしれない。妹が欲しい人にめっちゃ好かれる、みたいな属性。
「あの、ありがとうございます? でもわたくしには兄が二人おりますので、あの、もう充分…」
実はジークお兄様の上にもうひとり兄、長男がいたりする。ゲーム本編ではまったく登場しなかったので存在感はないし、『私』の知識もないのだけれど、ロゼッタの『記憶』があるのでその辺は問題ない。
「あ、でもお姉さまは欲しいかも」
そこでキャロル先輩とばっちりと目が合った。
そう!! そうなのですよ!! そうなのそうなの! だがらそこなのよ! ……ん? 待って、つまり私という妹をゲットするにはお兄様と結婚すればいいんじゃない!?
突然目の前がキラキラした。
めっちゃwinwinだこれ!
そうなるとミラージュ様はライバルということになる。
妹が欲しいミラージュ様→妹・キャロル先輩。
妹が欲しいキャロル先輩→妹・ロゼッタ。
どっちに転ぶかは私の努力と運命にあらがう力とお兄様次第。
「ま、負けませんから…」
キラキラとしたチームを畏怖しながらもなけなしのガッツを奮い立たせる。
なにもかも凄いイーズデイル家だけれどイオリス家だって良いとこあるよ!(たぶん)
キャロル先輩の背に隠れつつミラージュ様にメラメラと闘志を燃やす。
ミラージュ様はあろうことか、にっこりと笑って私の頭をぐしゃぐしゃとなでた。
ちょっ!!! 嘘でしょ!? 脈絡もなくレディに対してこの仕打ち!! 犬の子みたいに撫でるの禁止!!!!
「何してるんですか」
「兄上、さすがに失礼ですよ」
救いの声到来!! モブAとロイド先輩だ。もっと言ってやってください!!
女の子の頭は、勝手に、さわっちゃダメ、なんですからね!! 言えないけど! さっきのロイド先輩の不意打ちはともかく! あれはちょっとときめいたからセーフ!
ていうか、何で今撫でた!?!?
「やあ、ロイド。騎乗おつかれさま。2着で残念だったな」
「死ぬほど恐ろしかったですよ、もう二度と乗りません」
手を広げて迎えるミラージュ様にロイド先輩はぴしゃりと言い切った。
「つれないな、年越しの有騎馬記念杯を一緒に狙おうよ」
「おひとりでどうぞ。俺はもう御免です」
辛辣!!
学園ではあんなに人当たりのいいロイド様でもこんな風に話すことあるんだね! とても新鮮! やっぱりお家の方との付き合い方は違うんだね。調子のいいお兄さんと堅実な弟って感じ。ちょっとほっこりしちゃう。
「冬も出るんですか…」
げっそりとした口調でモブAが会話に割って入る。
そうだね、そうなるとモブAの気苦労は絶えることが無いね。
「いや、まだそれは分からないけれど。これから謝って来るところだから」
そう言って本部の方を再び指で差す。
「イワシーミスに実力があるのは分かりました。あれほどドタバタしたのにうちのナギサと2着同着とか本当に面白くない」
「ふふふ」
イワシーミスの実力を認めつつもちょいちょい噛みつくモブAにミラージュ様はご機嫌な様子。この二人実は相性良いのでは?? あと思ったより二人とも元気そうでよかった。
「今度出場した時は差を明確にしてナギサが勝ちますので」
「いいね、うれしいな。君がそんな風に言ってくれるなんて、私はこれからする土下座さえ苦痛ではなくなってきたよ」
「兄上…」
軽く頭を抱えるロイド先輩。
…苦労されてるんですね。
そこはかとなくミラージュ様に当たりの強い様子だったディーノさんの様子が思い出される。たぶんこの方、いつもこうなんだね。
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