第49話 楽しすぎるランチタイム
「坊ちゃん、昼飯買いに行ってきますが、いつものでいいすか? お嬢さんの分も買ってきますよ」
例のごろつき従業員三人組のうちの一人が声を掛けてきた。
「そうだな…昼飯か…」
モブAが時計を確認し、私の顔を見る。
そうね、ランチね!
当初の予定ではロイド先輩とキャロル先輩とモブAと私の4人で何かを食べるという感じだったけどもうそれは完璧に崩れたもんね。
「わたくしは何でも大丈夫です。オススメがあるんですか?」
モブAやこの人たちはこのイベントに詳しそうだし、おいしいお店をしっているのかもしれない。こうなったらもうグルメに目的をシフトチェンジして楽しんでもいいかもね!
私、食べ物の好き嫌いとかありませんので!
「美味いケバブ屋がある」
「ケバブがあるんですの!?」
予想外のメニューの登場に驚いた!!
ケバブ食べたい!! むしろケバブがいい!
なんでケバブっていう名前があるのかとかそんなことはもうどうだっていいのさ! この世界にはおにぎりもサンドイッチも普通にあるからね。
ビバ! ゲーム世界!!
この世界には洋食も和食も中華もなんでも存在するけれど、基本は洋食!って感じで(日本基準)ケバブは珍しい部類に入る。
食に関しては何でもごちゃ混ぜで存在しているけれど、やっぱり珍しい食べ物は『地方の食べ物』的な区分となり、『存在すれども店が分からず』という私にとっては悲しい状況なのである。
王都には飲食店も多いのだけれども、食べ歩きMAPがあるわけじゃなし、ネットがあるわけでもなし、地道に開拓をしていくしかないのだ。
以前、街で偶然『ナンを釜で焼いて出してくれる』カレーのお店を見つけた時は感動したなあ、カレーライスは食堂にもメニューがあるけれど、ナンは無かったんだよね(日本基準)。
注文すれば飛んでくるような配達も今のところ無いし。
牛乳の配達のような定期購買みたいなシステムはあるけれど。知識チートで○ーバーイーツとか出○館とかやったら繁盛するかな??
つまり結論を申しますと『食べたいものは逃すな!』という話。
「ぜひ食べたいです!!」
「そうか、じゃあ頼む」
そう言ってモブAは3人組の一人に頼んでいるけれども、ちょっと待って。
私はまだその方たちに挨拶もしてないのですが。
挨拶よりも食い意地が張っているとはさすがに思われたくない。
「ご挨拶が遅れました。わたくしロゼッタ・イオリスと申します。お食事の件、お気遣いいただきありがとうございます」
どんな相手にもきちんと対応しないとね。淑女ですもの。
綺麗に淑女の挨拶をすると、彼らはトビー、ラック、テッパンとそれぞれ名乗った。
小さいのがトビー、ひょろっとしたのがラック、でっかいのがテッパン…。
なんとなく縁起が良さそうな名前である…『競馬的に』
「ご丁寧にどうも~! お嬢さん甘口、ピリ辛、辛口、激辛のどれにします?」
先ほど声を掛けてきてくれたのはトビーさん。
三人の中でも飛びぬけて明るくて愛想がいい。
「ピリ辛でお願いいたしますわ」
「はい承知!」
トビーさんは元気にお返事をして、颯爽とケバブを買いに出かけた。
とっても楽しみである!
ここ最近一番の楽しみと言ってもいいかもしれない!!!
学園の食堂もメニューが豊富だし、いままで食に関しては困ったことはないけれどやっぱり美味しいものを食べるのは嬉しい。
「あれ…、イオリスっていうと…、あー、もしかして! 去年の長期休暇でうちに遊びに来たあのジーク坊ちゃんの?」
「妹だ」
「そうでしたか!」
「ええ!? ジーク坊ちゃんの妹さん!?」
残った二人のうちのひょろっとしたラックさんの問いかけにモブAが答えた。
今、お兄様の名前が聞こえたのだけれど、突然の盛り上がりにびっくりする。
ラックさんだけでなく、テッパンさんまで身を乗り出してきた。
え、なんで私がキラキラとした目で見られているの???
「そりゃあ、ジーク坊ちゃんの妹さんならもう!」
「これからもうちの坊ちゃんと仲良くしてくだせえ!!」
「はい??」
なにこれ!?!?
ラックさんとテッパンさんが交互にお兄様の事を褒める!!
どういうことなのお兄様、めっちゃ慕われている!?
「そうかー、お嬢さんがあのジーク坊ちゃんの!」
「あの人はホントすげえお人だよな~」
お兄様の人気! 突然のインフレーション!!
なんでリングベイル家でそんなに!?!?
「去年の長期休暇!?」
ちょっとまって私それ知らない。
えっえっ、どういうこと??? 去年の夏に何かあったの!?
「…ちょっとな」
どういうことなのかとモブAを振り返ると、そんな感じで肯定の返事が返ってきた。
むしろ気になるよ!!
さすがの私でもお兄様の交友関係まで存じ上げないんだけど! モブAとモブBを認識するので精一杯だったもの。何があったの!?
「そのお話わたくしも聞きたいです! ぜひ!」
教えて!教えて!
お兄様の武勇伝なら全て私が聞きたいんですが!?
身を乗り出して食い下がる私にモブAがしまったというような顔をした。
え、ここまで聞いておいて引き下がりませんよ!!!私は!!
「…それでな、俺たちが慌てふためく中ジーク坊ちゃんが~」
「そうそう、あれは驚いた!」
「まあまあ、そんなことが!!!」
「本当にあの時はもう諦めていたんですが…」
「ジーク坊ちゃんが笑顔で現れてなあ!」
「いや~すごかったよな」
お兄様の話題に花が咲く!!
これは楽しい!!! 楽しい!!!
これは…そう、『同推し』のオフ会!!!
みんながみんな同じ『推し』を推しまくる最初から最後まで楽しいオフ会!!
全員が全員お兄様の事を褒めてくれる!! 素敵!!
『推し語り』最高に楽しい!!! この世界で初めての体験!
ていうか、彼ら私と同じニオイがするよ???『ジーク・イオリス大好き同盟』のお仲間さんなのかもしれない!!
モブA配下3名入会を許可します!!
お兄様ってばある一定層から激烈に支持されるクチなのかもしれないね!ソースは私!
リングベイル家でのお兄様の様子を聞かせていただきつつ、私のお兄様の良いところの熱い演説もきっちりとアピールすれば、皆さん熱心に聞いてくれる。
モブAももう止めることは無い(諦めたらしい)。
これはオタク会と同じ! めっちゃ楽しい!
オタク同士に身分、年齢、性別、容姿などは関係ないのだ。
ということで、私達は急に仲良くなった。
…モブAより仲良くなったかもしれない。
ていうか定期的にお話しに来てもいい???
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