第36話 女子の人気
モブAが女子に人気と聞いて驚いた!!!
そうなの!? 同学年に王子様とかがいるのに!?
「そんなに驚いちゃう!?」
「あっ、ええと、いいえ! も…ロバート先輩はとても良い人ですものね!」
それは分かる。いつもなんだかんだ憎まれ口を言いつつも協力してくれるし。お兄様を立ててくれるし『ジーク・イオリス大好き同盟の仲間』の仲間だし。
「彼、貴族なのに貴族っぽくないじゃない? だから私たち庶民のクラスメイトからも結構親しみやすいというか」
「なるほど」
それは分かる。
モブA、めっちゃ口悪いもんな。
現代日本の常識を持つ私でも口が悪いと思うから、この世界の上流階級的にはだいぶ型破りなんじゃない?? 俗に言う不良枠みたいな…?
「あ、でもロゼッタちゃんもすっごく親しみやすいかも! 貴族の人もいろいろいるのね」
「ありがとうございます」
光栄です。
わたくしは心の中でえへんと胸を張る。
お兄様もそうですけれど、わたくしも貴族だからとか身分の差があるからとかそういう価値観は持たない主義なのですわ。
事実お兄様のご友人選びにもそういった差別は無い。口の悪いモブAが実は貴族だったことには(実はかなり)びっくりしたけれど、モブBも庶民出身だしね。
この世界でも貴族の特権意識などは根強く存在するし、そういった人たちが存在する以上学園内でも用心するに越したことは無い。
キャロル先輩が初め年下の私にも敬語を使っていたのは私が『どんな貴族か分からなかった』からだし、この学園には教職員も含めて貴族が多いので緊張する相手ばかりなのかもしれない。
ロイド先輩はいまだに『ロイド様』だしね…。
王子とその近辺はまた別格だから仕方ないね、私だって緊張するもんね。
しかし、モブA…。
ぶっきらぼうだけど優しいって?
…へえ、そうなんだ。
モブA人気じゃん。
モブAのくせに、生意気。
なんだか不思議っていうか、ちょっとだけモヤモヤする。
ゲームのヒロインであるキャロル先輩からモブAの話題が出るなんて。
変な感じ。
「……」
でも、そうだよね。
この世界に暮らす人たちは自分たちがゲームのキャラクターだなんて思っていないし、6人の中からしか恋愛対象を選べないなんてことはない。
世界にはたくさんの人が存在していて、選択肢だって無限にあるはずなんだ。
誰もが一生に一度、一回こっきりの人生。
そして学園生活。
「……」
なんだろう…。
なにか大事なことに気が付いた気がするのに上手く飲み込めない、胸に忍び寄る漠然とした不安。
深く考えたら酷く落ち込みそうな気がしてあまり考えたくない、ような?
「そうだ! 焼き立てを彼に持って行ってあげたら? きっと喜ぶよ」
もやもやとした思考に沈んでいた意識がキャロル先輩の声でふいに現実に引き戻された。いつの間にかオーブンからはパンの焼ける良い香りが漂っている。
「はい!? …ええと何です??」
ぼんやりしていたので聞き逃してしまった。
「ロバート君にお礼として今日作ったパンをあげたらどうかなって」
まさに良いことを思いついた!という感じでキャロル先輩がすすめてくる。
…お礼か。
でも、たしかに大鍋事件で助けてもらったお礼とかしてなかったし、生徒会室にも助けにきてくれたっけ。モブAには思ったより助けてもらっていた。
「そう…ですね」
このパンが美味しく作れたらあげてもいいかもしれない。
お兄様だったらわたくしが作ったものなら何でも喜んで召し上がってくれるけれど、モブAはどうだろう。…素人の手作りは嫌だとか言ったりするかしら。
「……」
うん、でも悪くないんじゃないか。
今後も兄妹ともどもお世話になると思うし、お礼はちゃんとしておいたほうがいいよね。
「そうしてみます」
「うんうん、きっと喜んでくれると思うな」
キャロル先輩がまるで自分の事の様に喜んでいる。
土曜の午後なので、もう寮の方に戻っているかもしれないけれど、お兄様に会いに行くついでに渡せばいいか。もちろんモブBにも。
いつもだったらお兄様が最優先なんだけれど、今回は特別にモブAには一番上手に焼けたやつをあげてもいい…かな。
「ところで…あの、お兄様は?」
「え?」
クラスで人気、あるの?
おそるおそる聞いてみる。怖い、でも聞きたい。
「お兄様は、クラスではどんな感じでしょうか」
聞いた。聞いてしまった!!
でもこの流れだったらそんなに不自然では無かったよね!?!?
女子に人気ある!? キャロル先輩そこのところどうなんです???
「ジーク君? ええと、ムードメーカーっていうか…ええと…変わってておもしろい人、かな」
うわあああ、キャロル先輩の目が泳いでいる。
ていうか、お兄様クラスではオモシロ枠なの!? モブAより評価低くない??
聞いちゃったけどこれ聞かなかった方が良かったかなあああ!?!?
いや、でも現状把握! 大事! だいじ!
私のハートにダメージ!! 前途多難!!!
その後、お兄様の良いところをメチャメチャアピールし続けた私にキャロル先輩はにこにこと相槌を打ってくれました。女神ですね!
ううう、つらい。
でも諦めないし!! まだまだここから!
諦めたらそこで試合終了なんだから~~~(泣)!!
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