第27話 やっつけ作戦タイム!其の2


「それはお前が目立つからだよ」

「目立つ?」


 モブAに当たり前の様に断言された。なんで?? 

 意味が分からないと怪訝な表情の私とお兄様に反してモブAとモブBは二人して納得の顔。ちょっとどういうことなのかしら。


「『妹』は目的の相手からだけ身を隠してるだろ、後ろからだと丸見えなんだよ」

「え!?」

「なんていうか、存在からして目立っているんですよね、全然隠れてないというか」

「存在が目立つ!?!?」


 どういうこと??? 存在が目立つって悪口かどうかギリギリじゃない???


「わたくし、普段から目立っていますかしら?」

「目立つな」

「目立ちます」


 なんで!?


「ロゼッタが可愛いから目立ってるってことか?」


 お兄様がとんちんかんな相槌を打つ。

 はいありがとうございます! 兄バカいただきました!!

 嬉しいけれど照れます。


「【私は誰かを見てます】っていう姿がバレバレ」

「むしろ、身を隠すつもりが全くない【潔い変な人】というか」


 二人はお兄様のシスコン発言に慣れているのか完全スルー。見事。

 そして気付いた。モブBこいつ純朴そうな顔してるくせに毒舌だ。

 

 ていうか、バレバレってなにそれ恥ずかしい!

 頭隠して尻隠さずだったってこと?? やだー! 私ストーカーできてるじゃん! なんてうぬぼれてました! 全然できてなかった! 現代だったら通報されてる! だって素人だもん!!


 過去の悦に入った尾行を思い返しては頭を抱える。

 うーーーん、でもそうか、それで目を付けられたのか~。

 別に特にアルフレート王子を見張っていたわけでは無かったんだけど、あの周辺に付きまとっていたら周りからはそう見えるよね。

 王子じゃなくて『お付きの二人を見てたんです』とか言ったところでアウトだし。


(うーーーん)


 それなら作戦を変えないといけない。

 度毎度不審者扱いされてはたまらないもの。


 …となるとやっぱりストーカー作戦より公的に攻略メンバーに近づける生徒会役員の方が動きやすい、かも、しれない。

 あんまり自由時間を減らしたくは無いのだけれど、仕方ない。


「お兄様は、わたくしが生徒会に入ったら困りますか?」

「ん? ロゼッタは生徒会役員という仕事をやってみたいのか?」

「そうですね…、はい。少し興味はあります」


 嘘だけど。

 業務内容というよりは、生徒会メンバーの恋の行方に興味100%!

 仕事はついで。でもまあ社会人スキルがあるし、なんとかなるでしょ。

 ロゼッタの将来の為の経歴にも悪いわけでは無いし。


「そうか…。であれば僕はお前を応援するよ。良い経験にもなるし、将来の為にもなると思う。ただ、アルフレートに良いように使われるのはダメだ」


 なるほどなるほど。お兄様の意見はやはりそこに帰結するのね。

 散々公式で『身の程知らずにも』なんて揶揄されているけれど、お兄様の譲れない一線なのだわ。


「あいつはだめだ。上手いこと言って思い通りにするのが得意なやつだからな」

「気を付けます」

「仕事や業務に関することなら仕方が無いが、個人的な交友はお勧めしない」

「もちろんですわ」


 お兄様ったらあれだけ生徒会と敵対していたのに、私の希望であればさっと切り替えてくれるその心意気が素敵。


「わたくしにとってはお兄様が一番ですから、アルフレート王子に何を言われても全部お断りします」


 無いとは思うけれども、お食事とか、デートのお誘いがあってもお断りします。

 そんな無駄に気を遣う事とかしている暇ないもの。時間が勿体ない。


「なら、いいか」

「早ぇな!」


 あっさりと許可が下りる。

 モブAのナイスなツッコミが場の空気を代表してくれました。お兄様は良いツッコミをお持ちですね。


「むしろ逆にあちらをスパイしてお兄様が欲しい情報をゲットしてきますわ」

「うーん、特に欲しい情報は無いけれど、その時は頼むよ」

「守秘義務は守っとけよ」


 お兄様ったら! 生徒会は恋の情報網の大本丸ですよ!!

 お兄様の想い人か、もしくは想い人の想い人がいらっしゃる場所ですよ、必要のない情報なんて1ミリもありません!


 わたくししっかり調べてきますので!! あとモブA、守秘義務は分かってますよ!


「それに、ナターリア先輩もいらっしゃるし」

「ん? ロゼッタはナターリア嬢を知っているのかい?」

「もちろんです! 5つの魔法属性を使いこなす天才魔術師ですわ! わたくし憧れておりますの!」


 事実、私はナターリアというキャラが大好きだ。

 何事にも真面目で頑張り屋の彼女の恋はついつい応援したくなっちゃうものばかり。…彼女のこれくらいのプロフィールなら一般学生が知っていてもおかしくない。


「ロゼッタはよく知っているなぁ、そういうところにアルフレートは目を付けたんだろうな。敵ながら目の付け所は褒めざるを得ない」


 ん? あれ、この反応。想い人の情報という感じではないですね。

 …ということは、つまり。


「あ、そうでしたか、お兄様はどちらかというとキャロル先輩の方が本命だったんですね!」


 ポンと手を打ってひらめいた。

 あと口から全部出た。


「な、何を突然っ!!」

 

 突然の名指しにお兄様は顔を真っ赤にして慌てだした。

 あ~~、これはビンゴですね! 

 そういやお兄様も腹芸も隠し事もできないタイプだったっけ。わたくしと同じで。

 ていうか、調べるまでもなくカマ掛けたら早かったね。


 ようやく謎が解けました!!!

 お兄様の恋のお相手はキャロル・クルック嬢!

 聖属性特化の庶民のヒロイン。


 そうなると、生徒会でのライバルは水魔法の攻略者 ロイド・イーズデイル。

 『体育会系の優しい筋肉騎士』の方ね。


「おまえら兄妹って、ホント似てるよな…」


 ぼそりとつぶやくモブAと静かに頷くモブB。


 褒めてくれてありがとう。

 お兄様に似ているだなんて光栄だわ。





 ****

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る