第26話 やっつけ作戦タイム!其の1



 ひとまずお兄様のクラス、2-Aに戻ってきました。

 道すがらに話しても良かったんだけど、廊下だとちょっと人の目があったので。

 あと私が萌えすぎていてIQ5だったのでいろいろダメです。


 私たちは円座を組むようにして着席した。

 作戦会議のはじまりです。

 1対3の対面方式では無いだけましかな…。教室が無人で良かった。


「さて。で、どういう流れで生徒会室に連れていかれたんだ?」

「え~と…」


 そこやっぱり聞かれるかぁ。さて何をどうやって説明したものか。

『窓から校舎を見ていたら不審者と間違われました』って、そんな説明できないからね??


「あの、まず…その、アルフレート先輩がわたくしと話したいとおっしゃったので、生徒会室に招待されました…」


 大筋の流れはそうだったはず。そのために不審者かどうかチェックが必要とかで尋問されたんだから…中身としては間違ってない。うん。

 招待というか、拘束されて連行って感じだったけど。


「そんな理由であんなに派手に連れて行かれたりするか?」


 モブAが横から口を挟んでくる。

 うん、まあしませんよね…普通は。ん? ていうか『派手』??

 『派手』という単語が若干気にかかるけれど私なりに普通じゃない理由を考えてみる。


「ええと、わたくしが逃げようという素振りを見せていたからかも…?」


 何せ最初は逃げ道を塞いでの尋問形式だったから超ビビってたし。私にテレポーテーションの能力があったら秒で逃げてた。


「なんだそれ、無理やり連れていかれたのか?」

「えと、力づくとかではありませんけれど、まあ…」


 私の答えにお兄様がむっとした顔になる。


 お兄様的にはそうなるかなぁ~と思ったのでぼかしたのだけれど即ばれた。

 どこまでも腹芸のできない私。

 同意はあったような無かったような…? 無かった気もするけれど…いえ、私が王子のロイヤルスマイルのプレッシャーに負けたのです。


 でもあの状況では普通断れないよね??

 しかしお兄様は普段からあんな感じでバチバチやりあってるのだとしたら、私の行動は『ジーク・イオリスの妹』としてはちょっと不甲斐なかったかもしれない。

 今度から気を付けよう!

 

 ていうか、さっきちょっと聞き捨てならない単語があったのですけれど…。


「あの…もしかして目立っていました?」


 あの空き教室から生徒会室まで、距離的にはそんなに遠くもなかったはずだけれど、なんとなく周りの生徒の視線が痛かったことは覚えている。


「僕は見ていなかったけれど、ロバートが目撃したのを僕に教えてくれた」


 ロバート? って誰だっけ。あ、モブAの事か。

 そうそうお兄様の仲良しさんであるモブA。垂れめがちなお兄様とは反対にちょっと釣り目で尖った感じの方。


「もの凄い目立ってたぞ」


 思い出すのも嫌そうな顔でモブAが話す。


「まるで大捕り物のようだった」

「ぼくも見ました。まるで罪人を連行するみたいでした。縄が無いだけの違いかなって」


 モブAのコメントにモブBが補足する。


 ひえっ! やっぱりか! 私の認識は間違ってなかった! 

 あれは完全に罪人の連行だったよ! 全然トキメキポイントとか無かったもん。


 ちなみに補足のコメントをしてくれたのがお兄様の仲良しさんその二、一見気弱そうな感じに見える温和そうな方。

 お兄様を中心とした三人衆もそれとなく赤青黄と三色そろってる。

 若干彩度が低いので目立たないけれども。


 しかも目立ってたなんて最悪…。明日から変な噂がたったらどうしよう。

 できる限り目立たず穏便にストーカー行為を遂行しなくてはいけないのに。


「『妹』が何かやらかしたのかと思った」

「まあ!」


 この発言はモブA。

 しないよ! 失礼だな! 私は礼節のあるオタクですぅ。


 と脳直で思ったけれど、私はモブAの軽口にはきちんと脳内で反論する。

 ホホホ、わたくし伯爵令嬢ですもの初対面の殿方にいきなり食って掛かったりしませんことよ。ちゃんとロゼッタが身につけた貴族としての教養がありますから。


 私は優雅にホホホと笑う。

 わたくしの令嬢としての完璧な振る舞いにモブAは嫌味ったらしく笑った。

 

(ムカつく~!!)

 この間の押し問答やら大鍋事件を経て、モブAの態度は明らかに雑になってきている。


「そういえばお前にはきちんと紹介してなかったな、僕の級友のロバートとクリスだ。お前を救出するのに協力してくれたんだ。お礼を言いなさい」


 そう言ってお兄様は私にモブAとBを紹介してくれた。

 助かった! ありがとうお兄様! 初対面のふりは難しかったの。

 …あとモブBの名前初めて知った。


「申し遅れました。わたくしジーク・イオリスの妹で、ロゼッタ・イオリスと申します。お助けいただきありがとうございました!」


 表面だけは優雅に美しく、わたくしはモブAとBにお礼と自己紹介をした。


「ああ」

「どういたしまして」


 初めましてではないけどね。

 モブAもモブBもお兄様の件でお世話になっております。

 『ジーク・イオリス大好き同盟の仲間』のお仲間ですし、もちろん合わせてくれますよね、と笑顔でプレッシャーをかけておく。


 …大丈夫、ちゃんと通じた。

 二人ともそこはかとなく目線を逸らしているけど。



「困っていたので大変助かりました」


 そうなのよ、本題はこっち。


「それにロゼッタを生徒会役員にスカウトって本当か?」

「…それなんですけれど、どうも本当のことみたいで」

「『妹』をスカウトだって?」

「正気ですか?」


 お兄様と私の答弁にモブAとモブBが驚く。

 モブBさっきからちょっとコメントが辛口だなおい。


「なんでもわたくしのリサーチ能力に注目しているとか。あと度胸と行動力」

「リサーチ?」

「度胸」

「行動力」


 怪訝な顔をするお兄様と、そこはかとなく納得顔のモブAとB。

 そこは納得しちゃう流れなの? 


「なんでわたくしに興味を示されたのかは分かりませんけれど」


 歓迎会の時はともかく、それ以外では表だって目立った行動はしていないのに。

 大鍋事件の時だって私は何もしないで見ていただけなのに。


「それはお前が目立つからだよ」

「目立つ?」


 モブAに当たり前の様に断言された。なんで?? 




 ****




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る