第14話 月イチマーケット
この世界は週休二日制ではない。
土曜日、学校は午前中だけで終わり、午後は自由行動となる。
昔、日本の学校もそうだったような…、うっ頭が…。
まあ、それはいいとして。
土曜日の学生は忙しい。
午後からがっつり部活動の生徒もいれば、午後はバイトにいそしむ学生、補講を受けて学力の増強をすることもできる。ちなみに日曜日は完全休みだ。
でもね、このゲームのイベントは常に土曜日に発生するといっても過言ではない。午後にたっぷり自由時間があるからね!
今日はとにかく情報の少ない庶民のヒロインちゃん、キャロル・クルックの行動に注目していきたいと思います。
新学期が始まってから数回土曜日に尾行&調査を行ったところ、もしや…?と思われるお相手が判明したのだけれど、…いや、一緒にいるところを目撃しただけなので全然確実では無いんだよね。
そこで本日!
親密度を確認できるイベントがようやく訪れます!
待ってました~!
『恒例の月イチマーケット!!』
ここで強制イベントが発生しますよ!!
うちの学園は基本的に寮生活の為、月末の土曜日には校内の敷地でマーケットが開かれる。
そこで学生たちは生活必需品をゲットしたりするわけなんだけれど、ゲームのプレイヤーにとっても物凄く重要なアイテムが密かに販売されるのだ。
ズバリ、育成補助アイテム!
・一点集中無音メガネ 知力成功率アップ+2 とか、
・重力制御付きリストバンド 敏捷成功率アップ+5 とか、
・幸運ウサギのストラップ 幸運+7 とか。
プレイヤーは二つまでのアイテムを装備できる。
まんべんなくパラを上げたい人、苦手を補いたい人、ギリギリ足りないパラメーターをアイテムで補強!! などなど、色んな手段として活用ができる。
でも実は、これマーケットにしか存在しないレアなお宝なのだ。
街に買い物に行っても売ってないんだなあ。
なぜならこれは全て彼の発明品だから!
土魔法の攻略者(1年)
魔道具発明家 シルヴィ = アルダー 年齢不詳
神秘的な紫の瞳に、緩やかなウエーブがかかった淡い金髪。襟足の毛先だけピンク色に染まっているのも不思議でチャーミング。初見はみんな『天使かと思った』と必ず言う(私調べ)。飛び級で入学してきた天才児だ。
ショタ好きのプレイヤーが、毎月月末の土曜日の売店で彼を見かけては『この子は攻略対象なんだよね? そうだよね??』ってギリギリしながらプレイして『1年間お疲れさまでした、その通りです!!』の展開になって感涙にむせび泣くやつです。
『今までの私服姿も可愛かったけど、まじか。特注の制服とか、膝小僧最高にかわいいです!! 公式さんありがとう!!』って私の友人は拝んでた。
あ、光のショタ向け仕様です、あしからず。
『シャインクリスタル~祈りと魔法の国』は健全な乙女ゲームなので。
でも彼のアイテムはほんとゲームをする上では必需品というか、育成アイテムを上手く活用できるかどうかで育成に天と地ほどの差が付いたりするんだよね! 安くは無いのでお財布とも相談が必要なのだけれど。
貴族のヒロインちゃんは最初から所持金が多くて、シルヴィ君のアイテムをゲットしやすいんだけれど、庶民のヒロインちゃんはこのアイテムをゲットするには休日にバイトしたり、イベントで賞金をゲットしたりしないといけない。
貴重なプレイ時間をバイトに費やしても絶対に欲しいアイテムなのである。
とまあ、ゲームの仕様についてはこれくらいにして。
【2学年に上がって一番最初のマーケット】の今日、ヒロインとシルヴィ君の『あらためてはじめまして』イベントがあるのです。
午前中の授業が終わり、わたくしはさっそく学園の中庭で開かれているマーケットにやってきました。
赤いレンガ敷きの広場はあの運動会とか学校のお祭りでみるような白いテントが立ち並び、街からやってきたお店の方々が、思い思いに商品を陳列している。
なんというか馴染みのある学校バザーのような様相。…いや、そのまんま学校バザーですねこれ。
気合いが入りすぎたのか一番乗りしちゃった。
お店の人たちもまだのんびりと準備をしているような感じ。
…ちょっと早すぎたか。
だって本日は監視も大事なんだけれど、買い物もしたかったんだもの。
イベントの確認もそうだけど、お兄様と私の分も欲しかったし。
お兄様にもそれとなく渡して効率よくパラメーターを上げてもらいたいからね。この日の為にちゃんとお金も用意したのだ。
せっかくなので場所の下見がてら広場を一周してこよう。
学園の中庭は二つ。
校舎と校舎を繋ぐ中央回廊を挟んで西と東。綺麗に刈りこまれた植え込みと石畳。
等間隔に置かれたベンチの他、パラソルの付いたテーブルセットなども数脚用意されている生徒の憩いの場だ。
ゲームでは西とか東の表記は無かったけれど、スチルで見たことあるのでなんとなくわかる。
シルヴィ君のお店は東の中庭の方ですね。
おほほ、オタクですもの。
ゲームの背景で描かれた画像と実際のモデルになった場所を探り当てるなんてお手の物です。
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