第7話 兄とモブ
ちょうどヒロイン達のステータスを書き終えた頃、聞き覚えのある声が耳に届いた。
(あ、お兄様だ…)
もともとくせ毛なので分かりづらいけれど、少しだけ寝ぐせを付けたジークお兄様が取り巻きの二人を連れて食堂へとやってきたところだった。
朝から推しに会えた幸せ。
自然に顔が緩んでしまう。
遠くからでもちゃんと声に反応しちゃうのがオタクの性。
昨日のトラブルなどまったく引きずってはいない様子ですね、流石です。
【不憫】に全振りされたお兄様、おちょくられても無下に扱われてもへこたれないメンタルの強さも魅力的。
お兄様は御友人と一緒にカウンターで朝食を受け取ってテーブルに着席した。
お兄様といつもいっしょにいる取り巻きの二人、スチルでもなんとなくいつも描かれているからお兄様とは仲が良いのかもしれない。
そういえば一番大事な私の推しのステータスをまだ確認していなかったよね。
【 名 前 】 ジーク・イオリス
【 年 齢 】 16歳
【 体 力 】 120
【 知 力 】 100
【 敏 捷 】 47
【 幸 運 】 62
【 魔 力 】 180
【 火 】 -----
【 水 】 210
【 風 】 -----
【 土 】 103
【 空 】 -----
【 聖 】 -----
【 魔 】 18
あっれ??? えっ? こんなもん???
うそでしょ???
天才を見た後だと地味にツライ!!!!!!
えっ、ほんと??? これ現実???
知りたかったけど、知りたくなかった!!(泣)
お兄様!! ヒロイン達より優れているステータスが少ない!! 悲しい!
体力と、水と…幸運のみ!!
解説させていただくと、イオリス家は水属性に特化した一族なので水だけは得意なのです!!(ロゼッタ調べ)
いや、私も同じ、っていうかクソザコな私よりお兄様の方が全然良いパラメーターなんですけどね!
なんだろう、地味にショック。
考えてみればゲームをプレイしていた時だって、ヒロインズのパラしか見たことなかったよね。
ヒロインはどっちも優秀で才能がある人材なのであった。
そりゃそうだ。
村人Aとか普通の平凡な一般人は物語の主人公になんかなったりしないわ。
主役クラスと比べるとそりゃあ見劣りするよね、そこは分かってたもん…。
ひとまずお兄様のパラメーター情報も日付と一緒に手帳に書き込んでいく。
ううう、悔しくて悲しいけれども、ジークお兄様の良いところはこんなパラメーターなんかじゃ分からないんだから。優しさ、とか思いやり、とかそんな項目があったらお兄様が断トツなんだから。
いや、でも幸運だけ抜群に良いのはお兄様っぽくて最高に素晴らしくない?
(転んでもただでは起きないオタク)
いや、でも待てよ?
私はちらりと周りの一般生徒のステータスをのぞき見してみた(ごめんなさい)。
【 名 前 】 不明 (男)
【 年 齢 】 16歳
【 体 力 】 180
【 知 力 】 72
【 敏 捷 】 65
【 幸 運 】 4
【 魔 力 】 80
【 火 】 -----
【 水 】 -----
【 風 】 68
【 土 】 40
【 空 】 -----
【 聖 】 -----
【 魔 】 -----
(なるほど、お兄様が特別低いってわけではないのね…)
ひとまずほっとした。
ヒロインズのパラメーターのすぐ後に見たので、「お兄様低い!」と思ってしまったけれど、落ち着いて観察してみると兄はそこそこのレベルだった。
むしろ中の上?ぐらいかもしれない。もちろんわたくしも。
いやでも、これが1軍と2軍の違いってやつなのよね! シビア~!
ゲームの恋愛攻略キャラはこの属性パラメーターが学園でトップの数値なわけだし。
ゲーム内で名前をもらえるか、その他大勢のモブになるかのボーダーラインなのかも。
つまり! お兄様がヒロインの恋の相手になるには1軍レベルのパラを身につけなくてはいけないという事! 水属性とか、まあ他の何かの方法でもなんでもね。
現実は甘くない。
でも、悲観するほどでもない。
よし、皆さまご安心してくださいませ!!!
このロゼッタがお兄様の育成インストラクターも務めて差し上げます!!!
そうと決まれば善は急げ。
授業以外の何かの要素で効率的にレベルアップしていきましょう。その方法を探しましょう!
すでにお兄様とヒロイン達にとっては2年目の春!
これからのイベントスケジュールに合わせて綿密に計画を練らなくては!!
本当に時間がない!!!
頑張れ私!!
茨道は切り開いて進むのだ!
…あとお兄様はどちらのヒロインがお目当てなのかもこれでは全く分からないですね。
こっちもすぐに調べなくては!!
ちなみに他の攻略者を探したけれど、食堂は人の出入りが激しくて見つけることはできなかったので、また次回調べることにする。
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