第8話 想い人を探せ!
さて、そんなこんなで放課後です。
私のクラスの授業はまだ入学三日目だったので、カリキュラムの説明とか選択授業の説明とかが主でした。
…クラスメイトが皆私を遠巻きにして近寄ってこなかったのだけれど別に凹んでません。
まずはお兄様の想い人のリサーチから始めたいと思います。
『国立アーデルハイト魔法学園』
赤レンガを基調にしたバロック建築風の学舎。
正門から進んで男女別の棟に分かれた寄宿舎、玄関ホールを抜けて広場、そして学舎。それぞれ学年ごとに教室が割り振られています。
…敷地面積…えーっとよく分からないけれどとっても広い(語彙力)。
日本産のゲームの為、学園内でも日本の部活動的な要素は多いのだけれど、貴族の子息が主に通う学校という事で敷地の奥の方には馬術部があったり、騎士倶楽部の修練場があったり、魔法研究院があったりするので本当に広い…としか言いようがない。
ちなみに学園の裏庭はそのまま広大な森へと繋がっている。
「さて、ではお兄様のクラスへと参りますか」
私は携帯用の筆記具を手に学舎へと足を向けた。
普通だったら入学したての新入生が1階級とはいえ上級生のクラスに足を運ぶことなんて恐れ多くてできないけれど、私はこのゲームを何度もプレイしているし、なんならこの学園を何度も卒業しているので、全然余裕です。勝手知ったる母校のようなもの。
今回ばかりは勇気と図太さをもって当たらせていただきたいと思います。
そもそも中身アラサーの私だしね。ここの生徒は皆年下みたいなものです。下手したら教員の方より私の方が年上かもしれない。
メンタルチート継続中。
私だって学生時代にはこんな勇気と行動力はなかったしけど、普通の15~18歳の学生よりうんと図太いんだから。
いいことです、いいこと。
むしろその持ち味を生かして行こうと思いますまる
やってきました、2-A お兄様のクラス。
2年生のクラスは特進クラス、Aクラス、Bクラスと3クラスあって、お兄様はAクラス。
H型の校舎の渡り廊下を起点に向こうが特進クラスでこちらがABクラス。
私は校舎の間取りを簡潔にメモしていく。
特進クラスは基本的に王族や特に能力が秀でている方々の為に特別なクラスで、このゲームの登場人物も特進クラスが多い。そしてそのまま実力順のAとB。
お兄様はそこそこの実力の持ち主なのでAクラスなのは順当といったところ。庶民のヒロインちゃんも一緒のAクラスだしね。
さっそくクラスの中を覗き込んでみるとお兄様はすでにいませんでした。
ちょっとがっかりもしたけれど、今回はお目当ては別なので問題ありません。
「!」
いました! 目当ての人物発見!!
焦げ茶色の髪に空色の瞳のお兄様の友人その1!
全体的に青と白のお兄様を引き立ててくれる良い色彩のモブキャラさん。
「ごきげんよう、そこの先輩、ちょっとよろしいでしょうか」
「?」
丁度帰り支度をしていた彼が私の声に顔を上げた。
名前公式に載っていなかったから分からないのだけれど、いっつもお兄様のスチルの右側で兄に手を差し伸べたりしてくれていた方。わたくしちゃんと覚えていましてよ!
クラスの扉からひょっこりと顔を出し、彼を手招きする。
「そんなにお時間は取らせませんので、いくつか質問に答えていただけますか?」
「…お前、ジークの妹か?」
「はい! そうですわ! 初めまして。わたくしロゼッタ・イオリスと申します! 貴方は兄の御友人の方でしょう?」
「……まあ、そうだけど」
彼は突然現れた下級生に戸惑いつつも返事を返してくれる。
といいますか、、名乗る前でしたのにすでにわたくしがお兄様の妹ってよくお分かりになりましたね。
さすが脇役なのに『妹キャラ可愛い』とファンのお姉さま方に評判のロゼッタです。
…昨日のお兄様連れ去り事件(?)でだいぶ目立ってしまったのかも、という事実は無視しましょう。
「で、何か用?」
「はい! いくつか聞きたいことがあるのです!」
兄の個人情報に関わることなので、彼には廊下の端にまでご足労いただき、あらためてお願いする。
「お兄様の学校でのご様子をお伺いしたいのですわ」
「なに?」
「最近、お兄様は困っていることとか、何か悩んでいたりとかありますでしょうか?」
本当は好きな相手が知りたいのだけれど、ひとまず遠回しに聞いてみる。
「……何で俺に聞くんだ。あいつに直接聞いたらいい」
「直接聞いても教えてもらえるわけないではありませんか」
兄は見栄っ張りなところがあるから、絶対に絶対に教えてくれないし、そもそも影からサポートする予定なので直接聞くのは最後の手段である。
「なら、俺も話すことはないな」
「ええ!? 意地悪しないで教えてくださいな」
「意地悪じゃない。あいつがあえてお前に話さないことを俺が教えるわけにはいかないだろ」
兄の友人! 常識的!
普通にいいひとだった!!
知ってた!(いや知らなかったけど)
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