第11話 調査結果
あれから一週間。
地道な調査を行い情報を収集したけれど、兄の恋路が実りそうな可能性は欠片も見いだせませんでした。
…知ってた。
いや、ストーリー的にはこれで正しいし間違ってない。
知ってたよ! 知ってたけどね!!
この程度ではまだへこたれませんよ!
こちとら何年茨道の隙間産業やってると思ってるんだ。まだ全然心は折れてない。
需要と供給のバランスに泣いたって秒で回復してやりますから!
…まだ慌てる時間じゃない。(そうか?)
ひとまず落ち着いて状況を整理します。
まず、現時点でヒロインその①貴族のヒロイン、ナターリアは火の攻略対象ユージン・メイナードのルートに入っているのではないかと推測される。
…たぶんだけど。
なぜなら彼女は生徒会のメンバーになっていたから。
学園物のゲームで生徒会メンバーとの恋愛はお約束だからね。
ちなみにうちの学校では
生徒会長(2年)
空魔法の攻略者 我が国の第二王子
アルフレート・オウノ・アーデルハイト
金髪碧眼で文武両道、品行方正。少女漫画の王道の王子様。攻略対象のセンターを務めている。
副会長は二人 (2年)
火魔法の攻略者 ユージン・メイナード
深紅の瞳を持ち、背中まで伸ばしたアイボリーの直毛を首の後ろでひとまとめにしたいわゆる『文系のインテリ眼鏡』。
水魔法の攻略者 ロイド = イーズデイル
琥珀色の瞳に短く刈った濃紺の髪の『体育会系の優しい筋肉騎士様』いわゆる気は優しくて力持ち系。
赤・青・黄色。
説明しなくても色で分かる。
キャラクターものでありがちの配色バランスとなっております。
王子様の脇を二人の部下ががっちり固めるという王道スタイル。
三人ともまだ2年生なのだけれど、立場が立場なだけに特例的に生徒会を独占しているといった状況。
まあ大人の都合とかいろいろあるよね。
乙女ゲーを把握したければ生徒会を観察せよ!!
これ基本。
(…現代ものはアイドルとか入ってくるからまたちょっと別だけど)
この3人のうち空と火の攻略者がお相手の場合、生徒会への参加が必須ルートなのです。たしかに将来職業とか地位、立場的にも必須スキルなのかもしれない。
学生時代は生徒会なんて面倒くさいことをあえてやるのは『お祭り好き』か『内申点狙い』『目立ちたがり屋』とかって思っていたけど、学生という失敗しても許される立場でトップに立つ者としての予行練習ができるのだから王子様や有力貴族がやるのは道理だわ、って年取ってから思いました。
なので将来政治家を目指したり、会社を立ち上げたいなどの夢と希望を持っている学生諸君ははりきって参加してみるといいと思うぞ!(メタぁ)
とまあ話はちょっと逸れたけど、ナターリアの火属性が頭一つ抜けた分、この火の文系インテリ眼鏡くんといい感じなんじゃないかなって話。
何か特別な出来事があったりしたらひっくり返る可能性がゼロではない。
ちなみにもう一人の庶民のヒロイン、キャロル・クルックの方は残念ながら、何の情報もつかめませんでした。
パラメーターからもこれ以上の情報が読みとれないので、これはもう直接現場(キャライベント等)を目撃するしかないかなって。
まだ接触自体も果たせていなくて機会をうかがっている感じ。
お兄様推し仲間のモブAさんとBさんほど気楽に突撃できないのよね。
ていうかぶっちゃけ2年の春ってゲーム内でもステータスを上げる期間なのであんまりイベントが無いのです。
なぜなら夏にパラメーターの数値で左右される重要なイベントがあるから!
ずばり『夏の課外授業』!
私たち魔術師が生涯のパートナーとなる精霊と契約する重要なイベントです!
★属性パラ250以上でBランクの精霊
★属性パラ300以上でAランクの精霊
もちろんランクの高い精霊と契約できた方が今後使える魔法も増えるし、ストーリーも有利に進められるし、成績にも直結する。ちなみにCランクだと平凡というか魔術師として普通という評価になる。
この精霊との契約もゲームの醍醐味なのです!!
手の平サイズの妖精から人が乗っても平気なくらい大きな幻獣とか。パラメーターによって契約できる精霊がめっちゃ変わる。1年後にランクアップの儀式もあるし。
…正直に言おう、私、育成シミュレーションも大好きでした!!!
うちの子最高にかわいい!! 育てるの楽しい!! うちの子自慢よくしてました。
炎の魔法剣士を目指してプレイしていたときに、炎のたてがみを持ったユニコーンタイプの精霊を引き当てたときは「俺がこのゲームの王子様だ!!!」ってなったよね。
奇跡も魔法もあるんだよ!!!
申し遅れましたが、このゲームガチャ要素もあります!
…神引きしたいです!
そう。
あれこれ語ったけど、つまり夏までの育成が大事なんですよ。いろいろ。
恋も勉強も、とにかく2年の中だるみしちゃうこの時期が!!
強引に『ジーク・イオリス』ルートをねじ込むのは夏がタイムリミットと覚えておこう。そこからはキャラ別のルートに固定されてしまうので。
今は4月だから、正味半年。
そう考えると、やっぱり時間がない。
…余裕で慌てる時間だった(反省)。
ハードモードだ…。
実際はゲームよりはるかに難しい。
すでに1年出遅れてるし、ロゼッタは1学年下だし、接点もないし。
何だか不安になってくる。本当に私にできるだろうか。
この世界にはセーブもロードもないんだもの。
人生にやり直しなんてできるわけない。
リアルで一回きり。
そう思うとちょっと怖い。
あ、ダメ。
この思考の流れは良くない。
あんまり気づきたくない現実にぶち当たりそう、なので、
そういうときは強引に己を鼓舞して気持ちをねじ曲げるのが正解!!!
時間がない今、必要なのは闘志!!
何が何でもお兄様を幸せにするのだという気合い!!!
不憫キャラ萌え!!!!
お前を絶対に幸せにしてやる!!
私がやらずに誰がやる!!
………。
………。
………。
…よし、オッケー、持ち直した。
でも私だって鬼じゃない。
このゲームのキャラクター達はみんな好きなので、彼らの自由恋愛を無理やり捻じ曲げてどうこうしようとは思ってないよ。犯罪行為ももちろんしないし。誰かがひどく傷つくようなことだってもちろんしたくない。
だって私、このゲームが大好きだからね!
全てのキャラクターの自由意思は大事にしたいよね。
と、前置きが長くなったけれど(前置き?)
上記の心意気の上、『ジーク・イオリスの人権の尊重をごり押ししたい』と思います。
ダイジョウブ、ダブルスタンダード、成り立ってるから。
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