第4話 一度は言ってみよう「ステータス!」
でも、それほどゲーム制作陣に【不憫】枠として愛されたジークを恋愛対象のイケメン達以上に『推し上げる』のって本当にできるんだろうか。
できないかもしれない。
ジークが不憫なのはこの世界に約束された理なのかもしれない。
でも、逆にこのゲームだからこそ可能性はゼロではないとも思う。
なぜならこのゲームの最大の特徴は『エンディング数がとんでもない』からだ。
いわゆるマルチエンディング。
パラメーターの調整でどんな職業、どんなエンディングを迎えるか分からないし、攻略キャラは増えないけれど、イベントは定期的に公式がアップデートしていろんなシナリオを追加していくスタイルだった。
正直、乙女ゲームにここまでの仕組みって必要?? とか言われたりしてたけど、それだけ自由度が高いってこと。
私も推しの主要スチルは全て回収したけれど、完全に全部のルートを回れたかって言うと正直自信はない。同じセーブデータから枝葉スタートしてもまったく同じエンディングにはならなかったこともあったし。攻略本や攻略サイトもあったけど、きちんとしたエンディング数は明記されてなかった。
何回プレイしても「え?こんなシナリオあったっけ???」「え、このスチル知らないんですけど…」ってことがある攻略班泣かせの一生遊べるゲームだった。
つまり私が頑張れば、この【不憫】が約束されたお兄様の恋にも成就する未来があるかもしれないんじゃない??? ってこと!!
『私』というこのゲームを熟知したオタクと『ロゼッタ』の力があれば、できるかもしれない。
いや、無くても作り出すのがオタクなんだって。
これは、ほんともうやるしかない。
俄然力が湧いてくる。
ていうか、もうすでに昨日の新入生歓迎パーティーだって少し変えてしまったしね。
本来のストーリーでは舞台上にヒーロー役が二人登場してしまって、完全に位負けしたジークを観客がプークス!と笑い、「お兄様を馬鹿にしないで!」ってロゼッタが泣き出したことによって慌てたジークが妹を連れて退場→劇はそのまま続行、という流れだったはず。
確かに私は泣いたけれど、本筋より負け犬感はだいぶ改善されたはずだ。
私がいるのに、そんな後味の悪い展開にしてたまるもんですか。
とっさの事だったけれど、自分グッジョブ!って褒めてあげたい。
ボーテ! 100点!!
でもね、見つけてしまいました。
私の力。
『ステータス』
異世界に来たら、ひとまず言っておいて損はないっていう魔法の言葉。
良い子のオタクはみんな知っているよね。
【 名 前 】 ロゼッタ・イオリス
【 年 齢 】 15歳
【 体 力 】 35
【 知 力 】 70
【 敏 捷 】 21
【 幸 運 】 16
【 魔 力 】 60
【 火 】 -----
【 水 】 70
【 風 】 28
【 土 】 34
【 空 】 18
【 聖 】 -----
【 魔 】 5
…見れたじゃない。
鏡に映った自分の左下にパラメーターの表が現れた。
実際のゲーム画面にもこのステータスは常に表示されていたので呼び出せるかと思って試してみたけれどビンゴ!
おおお、何の説明書もチュートリアルも無かったけどいっこくらいチートなネタを見つけられてよかった。ゲーマーでよかった私。
自分のパラメーターを見ては何となくクソザコのような気がしないでもないけれど、ちょっとそのことは置いておいて…。
このパラメーターってやつはゲームを通してとても意味がある。
毎日の行動(勉強とか運動とか、遊びとか)でパラメーターが上がったり下がったりする感じ。
ほんとシャインクリスタルって恋愛ゲームのくせに、妙にこういう育成ゲームシステムとかもしっかりと作りこんでいるんだよね。
私は好きだったけれど、純粋に恋愛だけを楽しみたい人達からは『不要』の声もあったとか無かったとか…。
まあ恋愛抜きにしても普通に楽しめるゲームです。私は好き(2回)。
ちなみにロゼッタの記憶を探してもこの世界ではこのパラメーターの表示は【一般的にありえない】ということが分かる。
つまりこれってかなりのアドバンテージではないかな?
ステータスを『見る』ことしかできないけれど、見えないより全然いいよね。
これならだいぶストーリーを有利に運べると思う。
しばらくゲームから離れていたからちょっと細かい設定とか忘れてしまっているところがあるんだけれども、なるべく思い出してジークの恋が有利になるような展開に持っていこうと、私は気合をいれるのだった。
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