第11話 襲撃
時は遡ること数時間前。
「おはようございます! 冒険者さん!」
「おっ、おはようごさいます」
翌朝、元気の良い挨拶をする栗色髪の受付少女の声に俺は欠伸をしながら返事をした。
昨日は早めに寝たためか身体の疲れは取れ、頭もスッキリとしている。
さーて昨日と同じく今日も異世界ライフを満喫しますか!
美しい朝日を背景に俺は宿の朝食を取ると早速ギルド紹介所へと足を運ぶことにした。
まだ早朝ということもあり出店は開いておらず鶏のうるさい声が鳴り響く。
人の数も夜に比べると疎らだ。
「うわっ人多ッ!?」
しかしギルド紹介所に辿り着くや否や、中から溢れるほどの人で埋め尽くされていた。
おいおい、これ全部冒険者なのかよ……流石は人気の職業だな、早朝でもコレだ。
昨日とそこまで変わらん光景だが……一つだけ確実に違うことがあった。
「おいあいつか?」
「Dランクでギガ・レビュアズ倒したって奴……マジなのか?」
そう、俺が紹介所に入った途端、冒険者達が一斉に俺を様々な目で見つめきたのだ。
ヒソヒソと聞こえる話し声、どう考えてもギガ・レビュアズについてだろう。
「あっマックスさん!」
そんな時、受付嬢であるハロさんが俺を見掛けるや否や笑顔で手招きをしてきた。
昨日と変わらず、スーツを纏い眼鏡をかけ出来る人間という雰囲気を醸し出している。
「あのハロさん……この視線は」
「もちろんギガ・レビュアズについてですよ! 話は直ぐにも広がって今じゃこのギルドでは一番ホットな話題ですよ」
やっぱりか、思ってた以上に奴を倒したことは相当話題になっているらしい。
「それと昨日のクエストの功績を考慮しマックスさんは特例で一気にDランクからAランクへと飛び級になります」
「はっ!? Aランク!?」
「本来ランクを上げる為にはギルド指定の試験が必要なのですが今回はありません」
まさに青天の霹靂。
いきなりのランクアップに啞然とし開いた口が塞がらない。夢じゃねぇよな?
ハロさんによるとDランク冒険者がSランククエストを成功させるのは前代未聞。
ギルド運営でもその事実は衝撃を走らせこの決断に至ったという。
「それでは早速ですが……こちらにサインとギルドカードの提示を。これで手続きは全て完了です!」
渡された書類には【本日より貴殿をAランク冒険者と認める】と記されている。
ここにサインをしてギルドカードの詳細を変えれば手続きは完了とのこと。
急展開に驚きだが……まぁ地位が今よりも向上することは俺としても好都合。
そう肯定的に捉え、簡単なサインを書き終えた、その時だった。
「あれ? あれあれあれあれェ!?」
「ん?」
小馬鹿にしたように感じる声が耳に入る。
何事かと振り返るとそこには複数人の冒険者と思われる男女が俺を見つめ笑っていた。
リーダー格と思われる男は短髪の赤髪を靡かせバンダナを巻き大剣を背負っている。
マックスと同じくらいのイケメンフェイスだが……何処か不快感が募る。
周りの取り巻き達は戦士や魔法使い、僧侶などの派手な衣装を着飾っていた。
「なっ『アルコバレーノ』……!?」
「『アルコバレーノ』?」
「このギルドにいる上位パーティチー厶ですよ! マックスさん早く逃げて!」
「はっ? 逃げて?」
「早く! 貴方はあの人達に__」
ハロさんの必死の忠告も虚しく、赤髪の男は有無を言わさず俺の肩に手を回すと嘲笑のような顔を浮かべる。
「よぉマックスく〜ん、久しぶりだな〜!」
「えっちょ……」
同時に取り巻き達は好き放題に俺への暴言をいきなりぶち撒けた。
「あれ? うわっ残飯君じゃ〜ん! 何で生きてんだ?」
「よくまだここに顔を出せたな! あれほどボコボコにしたってのに!」
「気持ち悪っ、ウケるわ!」
そう、そして今に至る……という訳だ。
聞くに堪えないような言葉の数々。
まるで俺のことをゴミか何かのように扱うような態度。
誰なんだこの人らは? 口調的に昔の話マックスと関わりがあるよなこれは。
「あーっと……どちら様でしょうか」
「おいおい忘れちまったのか? 悲しいな〜俺だよリビル・ピアノ。少し前まで仲良くしてたじゃねぇか」
ピアノって……変わった名前だな。
しかしどう考えても仲良くしていたなんて和やかな雰囲気ではない。
そもそもリビルという男からはドラマで見るイジメっ子にも似たオーラが漂っている。
名前:リビル・ピアノ
年齢:19
性別:男
ユーザーランク:A
レベル:82
タイプ:剣士
使用属性:光、火、水、風
一瞬懐から見えた彼のギルドカードにはそう記載されている。
随分と輝かしい詳細、かなりの実力者なのだろう、周りの冒険者も萎縮している。
「アッハハ……そうですね、リビルさん」
ここは話を合わせよう。
あたかも知っているような態度で俺はリビルの言葉に受け答える。
「まぁそれはいいさ。ところでお前、昨日ギガ・レビュアズ倒したらしいじゃんか。んで飛び級でAランク? 凄いね〜」
「えぇ……ま、まぁ一応」
「そうかそうかぁ〜はぁ……お前さ、嘘ついてんじゃねぇよ」
「えっ?」
バキッ!!
「ぐぶっ!?」
何が起きたか直ぐには理解できなかった。
突然、俺の顔面には拳が迫り流血するほどの威力に吹き飛ばされる。
近くの木製の椅子をぶち壊してまい、辺りの冒険者達は愕然とした顔を浮かべていた。
つまり俺はいきなり……殴られたのだ。
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