3‐31閉幕にはまだ早い
「聴いたわよ、あなた、
先輩女官に声を掛けられ、妙はいやあと頬を掻いた。
あれだけ堂々と公の場に姿を現し、神の託宣だのなんだのと語っておいて、隠し徹せるとは考えていなかったが、職場にまで噂が拡がるとは。
先輩だけではなく、宮に務める女官が続々と妙を取りかこんで、あれやこれやと尋ねかけてくる。
「そもそも、どうやって
「ま、まさか、ご
「
正確には、女官たちは
(だから、累神様との関係はばれたくなかったんだよなぁ)
非常に面倒臭い。取り敢えずそういう関係ではないといって、女官たちをてきとうにあしらい、妙は昼ご飯を口実に職場を抜けだす。
新たな皇帝が累神にきまってから七日経った。廃嫡を取りさげたり、宮廷巫官との審議があったりと、諸々の手続きがあるらしく即日皇帝に、というわけにはいかなかったが、まもなく正式に即位が執りおこなわれるだろう。
小都は相変わらず賑やかだ。
屋台で
「ねえねえ、
「もちろんよ。あたりすぎて怖いくらい。都でも話題になっているそうね」
いうまでもなく、これは
「好奇心旺盛だけど、先入観で遠ざけているものがある……きゃあ、ぴったりだわ。なぜわかるのかしら」
妙が
毒にも薬にもならない娯楽だが、妃妾たちは歓声をあげ、夢中になっていた。
(ちゃんと借りをかえせてよかった)
あの時は勢いづいて大見得を切ったが、後から恐るべき額を前借りしてしまったことにガクぶるしていたので、無事に事業が成功して肩の荷がおりた。
星占の手帳を販売した豪商は今頃、笑いがとまらないはずだ。
嵐のように総てが終わって、まだきもちが落ちついていなかった。
「ひとまず、腹ごしらえかな」
腹が減ってはなんとやらだ。
歩きだしたところで背後から袖をひかれて、路地に連れこまれた。どうせ、
口を塞がれて、布にしみこませた薬を嗅がされた。
「君に逢ったときにこうしておけばよかったよ」
囁きかける低い声が最後に聴こえて、意識が遠ざかる。抵抗することもできず、妙は錦珠の腕に落ちた。
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