8 目撃者は誰?
「……へえ」
「目撃者は、いますよ」
「なによ、それ! 誰がみていたっていうのよ!」
「
妙がいったのが先か。
木が声をだすはずがない。幹が、裂けたのだ。
もともと、人の重さを支えるには木蓮の幹は細すぎた。緩やかに裂けてきていた幹が今頃になって、ひと息に折れたのだ。
雪崩れるように
白の嵐が乱舞する。
木蓮は、桜や梅みたいに綺麗には散らない。端からくすんで、老い、縮んで、みすぼらしくもほたほたと落ちる。そうあるべきなのだ。
無残に殺された花が、命を終える。
剥きだしになった
「……やっ……あ、ああぁ、ごめんなさい!」
「だっ、だ、だって、うらやましかったのよ! そ、
ああ、そうか。彼女は、分家の
「ゆ、許して……あやまるからあ!」
誰も彼もが呆然と
(霊なんかいない。亡霊を産むのは人の心ひとつ――特に、怨まれているのではないかという恐怖は、現実と紛うほどの幻を視せる。それが、心理だ)
妙がため息をついた。
(……まったく。怨まれるのがそんなに怖いなら、殺さなきゃいいのに)
それでも、ひと時の感情にのまれ、欲にかられて罪を犯すのもまた人間というものだ。
こうして、縊死事件は終幕を迎えた。
…………
……
「へえ、あの占い師の
宮の
紅の髪をなびかせた彼は、第一皇子の
「観察眼の鋭さといい、推理の的確さといい、息をのむほどにあざやかだな。ついでに人を追いつめていくときの容赦のなさも気にいった」
唇の端を持ちあげ、彼は笑った。ウラのある微笑で。
「……あの
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