2‐18犯罪心理学は哀れみには繋がらない
「……あんたは、彼女を哀れに想ったか?」
「哀れ、ですか。特にそうは想いませんでしたね」
罪のウラに恵まれない境遇があり、充たされない愛の飢えがあったのは事実だ。
だが、だからといって、嘘をついていいわけではなく。
「そもそも、私は哀れみってきらいなんですよね。誰かを哀れだと想う心理のウラには優越感があるんです。ほかにも、哀れみをかけることで善人だと想われたいという打算があったり――
彼女は度々、哀れな患者、といっていた。
「だから、私は彼女を哀れだとはおもいません。……なぜ、踏みとどまってくれなかったのか、残念ではありますが」
そこまでいってから、妙がへらりと笑った。
「まあ、私だって親に捨てられてますからね。誰かに哀みをもてるほど、いい御身分じゃないといいますか」
「な、なんですか」
「……なんでもない」
星を想わせる
「そうそう、この事件を受けて、後宮で新たな規則を設けることになった。金銭だけではなく、物品の報酬を受領するのも禁ずる、という法律だ。法の抜け道は塞いでおいたほうがいいということになってな」
「え、ええっ、じゃあ、私も商売ができなくなっちゃうじゃないですか!」
それは困る。とても困る。
だが
「あんたは第一皇子お抱えの占い師だろう。申請しておいてやるから、今後も腕を振るってくれ」
「えぇ、なんかそれもいやなんですけど」
そもそも、第一皇子つきの占い師が道端で
「累神様って恥とかないんですか。商談の時もそうでしたけど……ああ、でもあの時は、私がずぶ濡れだったせいで他の
「ん? ああ、あの時か。いや、あれはもともと、あんたを捜してたんだよ」
想像だにしていなかった言葉に
累神はあっけらかんと続けた。
「妃嬪から選んだりしたら、なにかと誤解されたり喧嘩になったりして、面倒だろう」
あらかじめ彼女の振りをしてくれと頼んでいたとしても、後々騒動になりかねない。なにせ、
「確かにやっかいなことになるのが想像つきますね」
「だから、あんたが最適だったんだよ。それにあんたと一緒だと、……気持ちが楽だ」
最後の言葉には、奇妙な重みがあった。
妙には帝族として産まれた皇子の
だが恵まれて、満ちたりて、育ってきたわけではないだろう。飢えることはなくとも、絶えず毒殺の危険がある環境だ。権力や富を奪いあう者たちの
だからなのか、彼は時々、空虚な眼差しをする。なにもかもを諦めているような。それが妙の胸に風を吹きこませる。
「さてと」
累神が憂いを振り払うように明るい声をだす。
「約束どおり、揚げ鶏でも食いにいくか」
「わあっ、忘れてなかったんですね!」
妙もまた、彼にあわせて、憂いを絶つ。
「できたばかりの揚げ鶏屋があって、めっちゃおいしそうなにおいが漂ってくるんですよ。高級すぎて、いつも通りがかりに覗いてるだけなんですけど」
「わかったわかった。好きなだけ頼んでくれ」
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