2‐5神の薬水を施す妃嬪
その宮は
「わあ、商売繁盛みたいですねぇ」
「ここが例の
「ああ、よくいるおひとりさま
「発端は頭痛持ちの妃嬪に
累神は宦官の服を着て、特徴のある赤い髪を帽子のなかに隠している。妙はふつうに女官の制服だ。
妃妾や宦官が続々と殿舎に吸いこまれていく。
まずは遠巻きに眺めていると、後ろから声を掛けられた。
「貴方がたも
妃妾に尋ねられ、
「そうなんですよ。
妃妾はそうですかと瞳を輝かせた。同時に握り締めていた指を解く。無意識に掌を握るのは緊張、もしくは嘘をついている時の動作だ。それを解いたということは気を許してくれたという証拠だった。
「
妃妾の視線の動きを観察するが、嘘をついている素振りはない。
「ほんとうですか。実は私も不眠続きなんですよぉ」
間延びして喋るくせを真似しつつ、妙は妃妾に調子をあわせた。
「まあ、そうでしたか。よろしければ、優先して御薬をいただけるよう、私からご紹介させていただきましょうか」
「有難いです」
「先にいって、御伝えしてきますね。それにしても幸運でしたねぇ。夢蝶嬪が薬をくださるのは晴れている時だけなんですよ。
そういって、妃妾はさきに橋を渡っていった。
「すごいな。それも心理絡みか」
「そんなところですね。鏡効果というんですけど、相手の言動を真似することで好意をもたれやすくなるんですよ。ほら、出身地が一緒だったりするだけでも、親近感が湧くじゃないですか。ちょっとした動き、言葉の調子、表情の移りかわりといった些細なものだと特に、無意識に強く働きかけて、知らず知らずのうちに好意をもってもらえます。やりすぎると逆効果なので、あくまでも、偶然似てるね、くらいのかんじで」
「……それ、男にはやるなよ」
「え、なんでですか」
「なんでもだ」
累神がやたらと強く説きふせてきたので、妙は訳がわからないなりにも頷いておいた。
「ま、でも、こういうところだと誰かを紹介するほど優遇されたりするものですから、心理云々関係なかったかもしれませんけどね」
「ねずみ講みたいなものか」
「そうそう……さて、いきますか」
それにしても
事前に累神が調べ、妙に教えてくれたかぎりでは、華光というのは大陸の南部で信仰されていた神だという。妃は南部から嫁いできた
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